カプセルベッドで安心・安全・安価なホテルに。株式会社CVSベイエリアの「スマートホテル」展開に迫る!

2016.02.12
インタビュー

都内を中心にベイホテルを運営する株式会社CVSベイエリアに、新しくスタートしたカプセルホテル事業についてインタビュー。全国的に増加するビジネスユースの宿泊客をターゲットに、ホテル事業をスタート。いまやカプセルベッドを置く「スマートホテル業界」において有数の企業へと成長しました。

2015年、訪日外国人観光客数は約1,974万人に達しました。ビジネスユースの宿泊客は全国的に増加の傾向にあり、特に首都圏において、宿泊サービスに対する需要が急増しています。このニーズに応えるため、ホテル運営に注力をスタートしたのが、浦安市に本店を置く株式会社CVSベイエリアです。ホテル事業は新規プロジェクトでありながら、2015年から2016年にかけて、東京と千葉で相次いで店舗を開業。いまやカプセルベッドを置くスマートホテル業界において有数の企業へと成長しました。
今回はCVSベイエリアのホテル事業の責任者である土井章博・取締役CRE戦略本部長に、ホテル事業の現状と未来について、伺いました。

株式会社CVSベイエリア
取締役CRE戦略本部長 土井 章博氏

はじめに、御社の事業の概要をご教示いただけますか。

株式会社CVSベイエリア 取締役CRE戦略本部長 土井 章博氏弊社は1981年、コンビニ加盟店としてスタートしました。「量よりも質」、すなわち店舗数よりも1店舗の売上高を重視し、直営店方式で店舗を展開しました。現在は千葉県と東京都で、ローソンブランドのコンビニエンス・ストア事業を行っています。
2006年には、東京証券取引所第一部に株式上場を果たしました。2000年代半ばごろから新規事業の開拓に本格的に着手し、ホテル(宿泊サービス)事業、マンションフロントサービス事業、クリーニング・リネン事業などを立ち上げました。今ではこれらの事業の売上高が、全体の25%以上を占めるまでに成長しました。

ホテル事業は、いつごろから手がけられたのでしょうか。

2009年11月、JR京葉線市川塩浜駅近くに開業した「CVS・BAY HOTEL」がスタートです。シングルルーム中心で、部屋数は108。ビジネスホテルをつくったつもりだったのですが、蓋を開けてみると、大半のお客さまは東京ディズニーランド・ディズニーシーの利用客。テーマパークのある舞浜駅から2駅という立地性もあり、おかげさまで稼働率は高く、週末や繁忙期になると満室による機会損失が発生するほどになりました。そこで、2015年12月、隣接地に新館を開業し、本館と併せて提供客室数を約1.5倍に増やしました。新館では従来よりも、ゆとりのある部屋を提供することで、ファミリーでの利用などに応えられるようになりました。

CVS・BAY HOTEL

CVS・BAY HOTEL 本館

ホテル事業の立ち上げを振り返って、いかがですか。

当時の私はコンビニエンス・ストアの店舗開発を担当していたのですが、弊社がホテル事業に進出する際、事業の責任者に指名されました。ホテル事業の経験はなく、青天の霹靂(へきれき)です。予備知識もノウハウも全くありませんから、大手ホテルチェーンのフランチャイズでの展開を考えたり、ホテル経験者の方々に話を伺ったり、いろいろと試行錯誤を繰り返しました。結局、すべて自前でスタートしましたが、初年度の稼働率は50%ちょっとで、大赤字でしたよ。

開業時期はリーマン・ショック後の日本経済が冷えきっていた時期ですね。初年度の稼働率としては及第点だったように思うのですが……

あれだけディズニーランドに近い場所で、50%超の稼働率。初年度であることを差し引いても、良い結果とは言えないと思います。次の年度も赤字で、3年目の2011年、いよいよ黒字転換かという時に、東日本大震災がありました。ホテルも被災し営業できる状態になく、ディズニーランドも休業。まさに泣きっ面にハチのような状態でしたね。建物を修繕し、ディズニーランドも営業を再開した後、ようやく上昇気流に乗ったように思います。単月で黒字が出るようになったのは、2011年夏のことです。累損を消すまでに、さらに1年かかりました。今では高い稼働率で利益を生み出す優等生です。

さまざまなご苦労を経て辿り着いたのが、カプセルベッドを利用した現在の「スマートホテル」なのですね。

スマートホテルの2号店「東京日本橋BAY HOTEL」

スマートホテルの2号店「東京日本橋BAY HOTEL」

スマートホテルの1号店は、2015年7月に東京都・中央区で開業した「東京銀座BAY HOTEL」です。和モダンをコンセプトに、ゆとりある共有休憩スペースやパウダールームなどを設けました。手頃な価格で提供したことから、出張客だけでなく、訪日観光客や女性のお客さまにも、ご好評をいただいています。稼働率も、7月に開業した初月から60%を超えていました。場所が場所だけに平日はビジネスユースのお客さまが多く、週末は観光客の利用が増え、あとは外国から来たお客さまという構成ですね。比率としては、ビジネスのお客さまが60%、観光客が20%、外国のお客さまが20%です。
5ヶ月後の12月上旬には2店目の「東京日本橋BAY HOTEL」を東京・中央区に、下旬には3店目の「東京有明BAY HOTEL」を東京・江東区に、そして2016年1月下旬には4店目の「日本橋室町BAY HOTEL」を東京・中央区に開業しました。「日本橋室町BAY HOTEL」は236床という大規模なもので、これらをすべて合わせると、約778床にのぼる規模のサービスとなります。

 「日本橋室町BAY HOTEL」 

破竹の勢いで「スマートホテル」を展開するその背景について、お聞かせ願えますか。

やはり好機を逃したくないという気持ちが強いですね。観光客だけではなく、ビジネス目的で首都圏を訪れる人が増えていますが、供給サイドが追いつかない。私どもは、「ビジネスホテル」とより低価格帯の「スマートホテル」、このふたつを軸に展開していますが、両方の業態を合わせたようなホテルも運営しています。できるだけ安価な価格帯で、安心して快適に宿泊できる施設を、ニーズに沿って提供したいと考えています。そうして検討を重ねた結果、コトブキシーティングさんのカプセルベッドに辿り着きました。遮音性、耐久性、耐熱性に優れ、十分な居住性能がある、素晴らしい製品です。先日、日本橋BAY HOTELに宿泊したお客さまから、「ベッドは2階だったが、登りやすく、落ち着いた雰囲気で、広さも十分でした」と感想が届きました。身長が180㎝を超える外国の方でもゆったりとくつろぐことができたと喜んでくださったそうです。実際に宿泊された方から高評価をいただいたことで、この事業にも自信を持つことができるようになりました。

お力になることができ、光栄です。評判を呼ぶ理由は、ホテル運営のコンセプトにもあるのではないかと感じます。

2009年に「CVS・BAY HOTEL」の本館をオープンさせて以来、「誰でもできるホテル」というコンセプトを掲げて来ました。特殊な技術や経験を必要としない、そういったものがまったくなくてもオペレーションできるようなホテルを目指して立ち上げたんです。

「誰でもできるホテル」は土井さん自らのご発案だそうですね。

株式会社CVSベイエリア 取締役CRE戦略本部長 土井 章博氏はい。最初のホテルを立ち上げる際、いろいろなホテルを紹介していただいて見学したり、お話を伺ったりして自分なりに「必要ない」と思うところは全部省いていきました。「ここだけあれば宿泊施設として成り立つ」ところを見極めて、一からつくり上げたんです。清掃やリネンの交換など外部に任せられるものは、すべて任せ、基本的には全部自動化して、少数の人員で回せるホテルを目指しました。
ただ、「誰にでもできる」というコンセプトでありながらも、ホテルとしてのおもてなしも大切にしています。
現在ホテル事業には11名のスタッフが携わっており、私も含めて大半が素人ですが、「おもてなしをしたい」という気持ちは逸品だと思います。私のコンセプトだけを徹底していたら、おそらく、ただ泊まるだけのホテルになっていたでしょう。それをアレンジしてくれた部下の功績は大きいです。インターネットの口コミでも、「親切に対応していただいた」といったお褒めの言葉をいただいているので、この方向性は間違ってはいないと確信しています。

今後の店舗計画について、お聞かせいただけますか。

2016年5月下旬に、東京・秋葉原に国内最大規模の全室女性専用スマートホテル「(仮称)東京秋葉原BAY HOTEL」をオープンの予定です。ベッド数は130床を予定しています。女性専用のカプセルベッド型ホテルというのは、ある種の挑戦でもあります。でも実際、女性客は増加傾向にあるんですよ。カプセルベッドに対する抵抗が少なくなっていらっしゃるように感じます。オープン予定の秋葉原店舗だけでなく、私どもは、どのホテルも女性にも安全・安心・快適さを感じていただける宿泊施設を目指しています。たとえば、2015年12月に開業した市川塩浜の「BAY HOTEL新館」は通常の部屋数が51で、我々がユニットと呼んでいるカプセルベッドが20床ですが、こちらのユニットは当面、女性専用としています。通常のスマートホテルでもフロアを分けるなど、男性用・女性用を完全に分離してゾーニングしていますが、それでも抵抗感を感じられる方はいらっしゃいます。最近は、女性の一人旅も流行っていますから、不安なく宿泊できるような環境を整えたいと考えて踏み切りました。女性のグループに貸し切りで提供して、女子会のように使用できるようなプランも考えています。

カプセルベッドを利用した国内最大規模の女性専用のスマートホテル、期待が膨らみますね。今は北海道や関西など、全国でもホテル不足が問題になっていますが、全国展開についてはいかがでしょう。

そうですね。首都圏が一段落したら、全国への進出も検討したいと考えています。最近では民泊が注目されていますが、今後も宿泊施設に対する需要はますます拡大するでしょう。内装も魅力的に、各店舗で差別化も図り、ひとりでも多くのお客さまに「またここに泊まりたい」と思っていただけるような事業展開を追及していきたいですね。スマートホテルは、コトブキシーティングさんのベッドなしには考えられません。ホテル事業の良きパートナーとして、ご協力を、これからもよろしくお願いしたいと思います。

大変嬉しいお言葉をありがとうございます。こちらこそ、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

 

取材:2015年12月9日

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