札幌文化芸術劇場 hitaruは北海道初となる多面舞台型の劇場です。3層のバルコニーで構成されたプロセニアム形式の2,302席で、国内外の優れた舞台芸術やさまざまな公演を鑑賞できます。
客席に並ぶのは、張地のデザインから座り心地まで劇場のスタッフが徹底的にこだわった札幌文化芸術劇場のためのイスです。設計時には、硬度の異なる様々なウレタンを用意し、モックアップで座り比べを実施しました。体に優しいシートラインを追求し、男女や体格に偏りが生じないように、多くのスタッフが参加しました。
クッションの張地は、自然の風景の中に垣間見える文化や伝統を表現しました。
本格的な劇場に相応しい華やかな赤い張地は、遠くから見ると、イスの張地全体にグラデーションがついているように見え、雄大な北の大地やその風景を思わせます。一方、近づいてみると、北海道の風土や伝統文化を感じさせる文様をモチーフにした柄が、のびやかに横たわる1本のラインのように織り込まれていることがわかります。青・緑・黄の緯糸が織り込まれた玉虫色の張地の中に浮かび上がる、奥行と深みのある色彩感が特徴的です。
背板は北の大地に根を張るように力強く直線を、肘掛と脚部は着席する人を包み込むかのような優しいカーブを描いた、緩急のある繊細なデザインです。肘掛の先端部は、面取りを施した繊細な形状です。掌が最も接する部分のため、触り心地の柔らかさ・優しさにこだわって、試作を何度も重ねてつくりあげました。