リニューアルによって客席内の動線を確保!通りやすい・通しやすい客席へ生まれ変わる劇場・ホール

2019.10.26
事例特集

何百席ものイスが並ぶ劇場・ホールの客席では、開演前・終演後という同じ時間帯で観客が一斉に動き出します。通路スペースには限りがある上、着席者がいる状態では横通路の通り抜けが難しく、また着席者も前の席との間の狭いスペースに人を通すことに苦労しがちです。どの劇場・ホールでも通路の幅に大きな差はないため、全国で同じ課題を抱えている施設も多いのではないでしょうか。今回は、イスの形状を工夫することによって、動線を改善した施設をご紹介します。座の形、脚の形、背もたれの形など、わずかな工夫によって客席の間をスムーズに移動することが実現できます。

01課題だった間口・通り抜けなどの改善を図った三代目ホール

日本青年館ホール

2017年8月1日、2020年に開催される東京五輪施設用地の整備に伴い、100メートルほど南に移した三代目日本青年館がグランドオープンしました。

ホールの建設計画当初、イスは二代目の日本青年館から移設することも検討されていました。しかし、イス1席分の間口や通り抜け等の課題があったことから、新しいイスの導入が決定。そして幾度もの検討を重ね、新しいホールに相応しい、オリジナルのイスを創り上げたのです。

1席分の間口寸法は、5センチメートル広げて50センチメートルへ。わずか数センチの差ですが、窮屈さが軽減され、座った際に隣の人と肩が触れにくくなりました。

通り抜けのしづらかった動線を改善したのは、着席者の膝裏にあたる座の先端を薄くした「スペーシア」です。着席者が座ったまま脚を座の下に引き込むことができるため、座ったままでも横通路の通行を妨げません。通り抜けたい観客はスムーズに通行ができ、着席した観客も「1度立ち上がって通す」という動作が発生しないため、両者のストレスを軽減しています。



02誰もが通行しやすい客席の動線を創り出す、三つの工夫

キャナルシティ劇場

キャナルシティ劇場は、1996年にオープンした大型ショッピングモール「キャナルシティ博多」内にある、ミュージカルや演劇、落語など様々な公演を開催するエンターテインメントシアターです。開館から22年目に行われた大規模な改修工事によって、かねてから老朽化が進んでいた客席のリニューアルを実現しました。三つの工夫を施して、来場者満足度の向上を目指しています。

一つ目は、「スペーシア」の導入。着席者の膝裏にあたる座の部分を薄くし、着席したまま脚を引きやすくしました。

二つ目は、肘掛の下を切り欠いた形状。着席したまま脚を横にずらすことができるため、「スペーシア」の導入と相まって、座ったままでも横通路を通りたい観客を容易に通すことができます。着席時の足元・膝元にゆとりがあるため、居心地もアップします。

三つ目は、背もたれの形状。客席の勾配が大きい2階席で、通路階段を上り下りする時に身体を支えやすいよう、背板の一部を長くして「手掛かり」としました。安定して階段を昇降できることは、スムーズな通行にも繋がります。

03常に進化を続けて来た客席に、更なるホスピタリティ向上を

Bunkamura オーチャードホール

国内最大規模のシューボックス型ホールが、オーチャードホールです。2011年には1階前方中央ブロックのイスを、見やすさを重視した千鳥配置へとリニューアル。そして2015年に、更なるホスピタリティのレベルアップを目指して、イスの座に「スペーシア」が導入されました。背もたれの部分は既存のまま、座だけの更新を行いました。

改修前の座は、真横から見た時に四角形を描いていましたが、コトブキシーティングが「スペーシア」と銘打った新たな座は、三角形。着席者の膝裏にあたる部分を臀部側に比べて薄くしたことで、四角形ではなく三角形の形をしています。この構造によって、着席している時の足元のスペースには、余裕が生まれます。それだけではなく、自分が座った席の前を通り抜けたい来場者が現れた時にも、座ったまま足先を引くだけで、他の来場者が通行するスペースを生み出すのです。

座の更新にあたっては、旧形状の座、スタンダードタイプ、スペーシアをそれぞれ運び入れ、既存の座との違いを関係スタッフが体験。スペーシアの形状が快適であることを、実際のホール客席で確認し、決定しました。

同タイミングで、各列の端のイスに設置された列番プレートも、より文字が識別しやすい大きなサイズに変更。さらに、後列からでも席が探しやすいよう、背もたれの裏側にも席番プレートを設置。通り抜けがしやすいスペーシアとのハイブリットで、席を探し辿り着くまでの時間を短縮しています。

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

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