国際的な大会に向けたスタジアムのリニューアル!ラグビー観戦にふさわしい観客席づくり

2019.09.13
事例特集

2019年・2020年と国際的なスポーツ大会が日本で開催されることを踏まえ、既存のスタジアムでは、ピッチの芝の更新、照明設備の変更、トイレ・プライオリティーシートのリニューアルによるバリアフリー化など、国内外から観客を迎え入れる準備が着々と進められています。特にラグビー競技の会場として選出されたスタジアムでは、国際規格のイスとして座跳ね上げ式のツーピースタイプが推奨されており、施設の利用状況を考慮しつつリニューアルが進められました。国際大会開催の開催で賑わう、スタジアムのリニューアルをご紹介します。

01既存脚部を再利用して、短い工期でツーピースタイプへリニューアル

日産スタジアム
(横浜国際総合競技場)

1998年の開場から20年。2002年のFIFAワールドカップ決勝戦をはじめ、数々のスポーツやエンターテインメントの舞台として使われてきた日産スタジアム。2019年・2020年と国際大会の会場を担う予定が続くことを背景に、施設の大規模なリニューアルがスタートしました。

コトブキシーティングに最も求められたことは、スタジアムを日々のイベントで使用しながら、観覧席の更新を行うことでした。イベントの合間を縫うように設定された限られた工期で効率良く進めるために採用されたのが、以前のイスの脚と連結パイプ部分をそのまま利用し、イス上台のみを新しくする手法です。アンカーボルトの新たな打ち込み作業などがないため、工期を従来の3分の1以下に短縮することができました。

これまでは背と座の繋がったワンピースタイプのイスが並んでいましたが、今回採用したのは、背と座が分かれている、座跳ね上げ式のツーピースタイプ。離席時に自動で座が跳ね上がることによって、誰も座っていない時には座が収納され、座が固定されていた以前のイスよりもコンパクトになり、通路スペースがこれまでより10センチほど広くなりました。15人掛の中央の席に座りたい時でも、席へのアクセスがスムーズです。座面の奥行も広くなり、長時間の観戦でも、以前より快適に過ごすことができます。



02既存スタンドを活かしつつ、メインスタンドを新設。全席を座跳ね上げ式に

熊谷ラグビー場

熊谷ラグビー場は、1991年にオープン。春の全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会が開かれるようになった2000年以降、大阪府の「花園ラグビー場」と並んで「西の花園 東の熊谷」と謳われてきました。今や東日本を代表する、ラグビーの聖地です。2019年の大会を目前にして、国際大会規格に適合したスタジアムに進化させるべく、2016年から全面的な改修工事を行い、2018年8月にリニューアルオープンしました。

今回の改修工事では、既存のスタンドをバックスタンドとして生かしつつ、対面に新しいメインスタンドを作りました。改修前のバックスタンドは芝生席で、メインスタンドの座席はベンチタイプが大半を占めていましたが、この改修では、約24,000席の座跳ね上げ式のイスを設置。1人1席に腰かけて観戦することができます。イスは観戦時にピッチの端から端まで体の向きを変えながら見渡せるよう、背もたれをやや起立させたラウンド形状に設計。座の収納時の奥行は、250ミリメートルと極限までコンパクトになるよう追求し、座席前後の通路の通りやすさも実現しました。スタンドの下部から上部に向かって4色のグラデーションで爽やかに彩り、夏の熊谷の熱気を払いのけるかのような清々しい佇まいです。

03スタンドを南に増設し、北に新設。シャープな印象ながら、柔らかな座り心地に

東大阪市
花園ラグビー場

1929年、日本初のラグビー専用球技場として誕生した花園ラグビー場。1963年から全国高等学校ラグビーフットボール大会の開催地になり、高校ラグビーの聖地として数々のドラマが生まれています。2015年以降は、建物が近畿日本鉄道から東大阪市へ無償譲渡され、施設名に市名を冠した現在の「東大阪市花園ラグビー場」の名で親しまれています。2019年の大会規格に適合したスタジアムに進化させるべく、改修増築工事を行いました。

観客席の改修では、南スタンドを増設し、新たに北スタンドも設けました。これまでの座席のほとんどは背もたれがないタイプでしたが、今回の改修を経て、座跳ね上げ式のツーピースタイプのイスが全席に採用されました。イスは、熱した高密度ポリエチレンに空気を吹き込んだのち、冷却して型をつくるブロー成形という手法で製造した、高い強度とシャープなフォルムが特徴のスタジアム専用シートです。ソフトな座り心地を保ちながら、フォルムはスマートでスリム。空席時の奥行は小スケールですが、着席時の背もたれと座面は広く、着席者の身体にフィットしながら大きくラウンドした形状により、快適な座り心地が得られます。芝の豊かな緑を引き立てる赤色の観覧席は、国際大会開催への期待を盛り上げています。

04メインスタンドを座跳ね上げ式に。既存イス移設で環境にも優しく

えがお健康スタジアム
(熊本県民総合運動公園陸上競技場)

2017年にネーミングライツによって「えがお健康スタジアム」と名付けられた、熊本県民総合運動公園陸上競技場。1998年3月の開場以来、くまもと未来国体、ひのくに新世紀総体、2011ねんりんピック熊本開会式などのスポーツイベントや、アーティストのコンサート・ライヴが開催され、県内外の多くの人々に親しまれて来ました。2019年には、国際大会を目前に、施設整備のため大規模な改修工事が完了しました。

メインスタンドには、ワンピースタイプのイスとベンチタイプのイスが並んでましたが、今回はその全てを座跳ね上げ式のツーピースタイプへ変更。状態の良かった脚部はそのまま生かし、イスの上台のみを新しく付け替える方法で、工期もコストも抑えた改修工事を実現。1席あたりの間口は、リニューアル前の席と比べて大きな差はありませんが、背もたれ・座面の奥行が広くなったため、以前よりもゆったりと座ることができます。特に着席者の背中を包む3次元形状の背もたれは、コート内を走り回る展開の早いラグビーの試合を観戦するのにも適しています。空席時は座が跳ね上がるため、誰も座っていない時のイスの奥行寸法は以前より65ミリメートルも縮小することができ、通路をスムーズに通り抜けできるようになりました。

バックスタンドはほぼ全席が背もたれのないイスでしたが、背もたれまたは腰宛のついたタイプへ変更。一部は、メインスタンドに設置されていたイスの移設で賄いました。イスの再利用は、環境にも優しい取り組みです。

メインスタンドの赤色は、えがお健康スタジアムをホームスタジアムとする地元のサッカーチーム「ロアッソ熊本」のチームカラーです。

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

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