改修が完了した有明コロシアム
2019年7月、有明テニスの森公園の敷地内にあるスタジアム「有明コロシアム」の改修工事が完了しました。客席内の主な改修内容は、最大約300席の車イス使用者、その介助者の席及び付加アメニティー席が設置できる観覧スペースの確保と、座席の全面改修です。
これまでの客席で課題として挙げられていたのは、イスの座り心地と、通路の広さです。メンテナンスを重ねながら長年大切に利用されてきたイスですが、現代の日本人の体格には少し窮屈なサイズであり、また、背と座が一体になったワンピースタイプのつくりは通路を狭める原因になっていました。これを解決するため、全ての席に導入されたのが、背と座のパーツが分かれた座跳ね上げ式のスタジアムシートです。
エリアで異なる3種類のスタジアムシートは、コートと同じブルーで統一
客席は、3種類で構成されています。どの席も、座が跳ね上がるツーピースタイプに変えることによって、従来のイスよりも背座ともにひと回り大きくなりました。
貴賓席エリアのイスは、ウレタンを張地で包んだクッション性のあるシートです。隣の席と連結せずに間隔を空けて設置することで個席感を高め、他のエリアとの差別化を図りました。
客席全体の下半分にあたるコートに近いエリアは、丸みを帯びたフォルムが特徴的なイスです。背と座の表面に施したシボ加工は、着座時の姿勢の崩れを防ぎ、席の間に設けた肘掛けは、着座姿勢で肘を預けることができるほか、仕切りとしても役立ちます。
高層のエリアは、スクエアフォルムのイスが並んでいます。垂直に近い背の角度が、自然と見下ろす姿勢にフィットします。肘掛けがない分、跳ね上がった座が背もたれと一体となったスリムなフォルムが引き立ち、通路もすっきりと広く使うことができます。
通路を広く・座り心地を快適に改善した座跳ね上げ式のツーピースタイプ
不特定多数の人が利用する施設では、有事の際の避難を考慮し、イスの前の通路は決められた寸法を確保しなければなりません。
限りのある空間において決められた席数を確保しなければならない時、定められた各列の前後間隔に置けるイスの奥行寸法は、自ずと小さくなってしまいます。これまでのイスの半数は、座が固定式のワンピースタイプだったため、空席時・着席時ともに同じ奥行寸法でしたが、座跳ね上げ式のツーピースタイプを導入することによって、空席時の奥行寸法の削減を図りました。確保しなければならない通路寸法は空席時に限られるため、座を下ろす着席時には、広い座面奥行を確保できます。安全の確保を図っただけでなく、座り心地の向上につなげることができました。
客席の縦通路には新たに手すりが設置されて、階段の上り下りでもスムーズな通行が可能になりました。
施設概要:進化を続ける有明テニスの森公園
1983年に開園した有明テニスの森公園。園内には、約1万人を収容する有明コロシアム、3000人を収容するショーコートのほか、一般利用しやすい屋外・屋内のテニスコート・芝生広場・遊歩道・ジョギングコース等が設けられており、近隣住民をはじめ多くの都民の日常スポーツの場として親しまれています。日本国内のテニスの殿堂として知られる有明コロシアムは、青一色に生まれ変わったコートと客席で、これからも多くの感動を生み出してくれるでしょう。