名古屋市公会堂
大ホール(リニューアル)

2019.11.05
劇場・コンサートホール

施設説明

名古屋市公会堂、3度目の改修工事を経てリニューアルオープン

大阪の中央公会堂、東京の日比谷公会堂と並び、公会堂建築の代表的な建物として数えられる、名古屋市公会堂。その誕生は、1930年10月に遡ります。第二次世界大戦中には防空部隊の司令部が置かれ、戦後は米国空軍の娯楽・厚生施設となり、公会堂の機能が全面停止した時期もありましたが、1956年には再び名古屋市の管理下に戻り、国内有数の文化と社交の殿堂として、今日まで広く市民に親しまれて来ました。1989年には、名古屋市都市景観条例に基づき、都市景観重要建築物に指定されました。

建物は緑豊かな鶴舞公園の一角に位置しており、地下1階・地上4階、大ホールと4階ホール、9室からなる集会室等で構成されています。老朽化を背景に、1956年と1980年に改修工事を実施。2017年には約2年間にも及ぶ大規模改修も行いました。

今回の改修のポイントとなったのは、歴史的価値ある名古屋公会堂を後世へ残すことでした。開館当初の雰囲気を残すため、外観や内部のデザインは丁寧な補修作業によって、ほぼそのまま受け継がれています。

今も開館当時の姿をそのままに残していることが評価され、2020年8月17日付で国登録有形文化財(建造物)に登録されました。

竣工時の意匠を復刻した、大ホールの客席

大ホールは、コトブキシーティングが1930年の竣工時に納めたイスのデザインを復刻させました。復刻の手がかりとなったのは、当時のコトブキシーティングのカタログ写真でした。

背もたれのパッドは、当時のノッチのデザインを忠実に再現。モケット素材の鮮やかな赤い張地とその縁取りは、ダークトーンに塗装された背板の木部と相まって、客席全体にノスタルジーな空気を誘い出します。2階のバルコニー席と3階席は、段差が高い階段状のため、ハイバック仕様です。

名古屋市のマルハチマークが入った脚部は、当時は鋳物製でしたが、今回はアルミダイキャストに変更。細身で曲線的な形をしていますが、丈夫で安定感があります。肘当は、触感が繊細な指先に触れること重視して、天然木で形成しました。腕を置きやすいように面は緩やかな弧を描いており、先端は自然と指先がかかるように丸みを帯びています。

竣工時のデザインを復活させる一方で、機能性や座り心地のためには、現代の最新技術を注いでいます。サイズは現代人の体格に合う形へと調整。座にはウレタンクッションと波形スプリングを用いて、長時間でも快適に座れるイスを目指しました。

昭和のレトロ建築が大切に継承されてきた、名古屋市公会堂。平成、そして令和の時代へと、歴史の継承が期待されます。

【2021.11.02追記】

居室データ

所在地
466-0064 愛知県名古屋市昭和区鶴舞1-1-3 地図
施主
名古屋市
設計
名古屋市住宅都市局、株式会社山下設計
リニューアル
2019年4月
席数
1,552
関連リンク
  • 名古屋市公会堂 webサイト
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