コトブキシーティング株式会社

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紀伊國屋サザンシアターにて紡ぐ宮沢賢治の理想郷「イーハトーボの劇列車」

レポート / 2013.10.22

本屋の隣にある劇場、紀伊國屋サザンシアターへ、10月中旬に足を運んできました。

現在公演を行っているのは、井上ひさしが生前に主宰・座付き作家を務めた「こまつ座」。演目は、今年で没80年を迎えた宮沢賢治の生涯を描いた「イーハトーボの劇列車」です。

紀伊國屋書店が有する劇場は、新宿に2箇所あります。
1964年、紀伊國屋書店新宿本店ビル竣工と同時に開場した紀伊國屋ホールと、タカシマヤタイムズスクエアに隣接した紀伊國屋サザンシアター。新宿通りに面している紀伊國屋ホールの方がすぐに浮かぶ、という方も多いかもしれません。

今回訪れたサザンシアターは、新宿タカシマヤから連絡通路で繋がっています。そのため、新宿駅から階段を一切利用せずに訪れることが出来るという、紀伊國屋ホールにはない大きな利点を持っています。演劇のほかにも、落語や講演会も定期的に催されており、老若男女幅広い年代が訪れる劇場です。


今回は、開場より少し早くお邪魔して、開演に向けた準備の様子を覗かせていただきました。

客席へ進むと、舞台上に装置を囲む舞台スタッフの姿が!
舞台装置の点検は、毎公演開演前に欠かさず行っているとのこと。舞台中央に置かれた斜めの円形ステージが劇中でどのように使用されるのか、想像力が膨らみます。

舞台上は、本番前の緊張感が溢れている一方、お客様の入場を待つ客席の雰囲気はとても穏やか。背や肘の部分に木を使った座席は、劇場全体を明るく印象付けます。
イスの張地はウール素材で、あたたかみがある柔らかな手触りです。貴色のオレンジ色の中に多色の糸が混ざっていて、きらきらと光るような色合いを醸し出していました。この客席は、いままでに何人のお客様を迎えたのでしょうか。
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開場が近づき、ロビーの物販コーナーでも、最終チェックが行われていました。

ロビースタッフは胸元に「こまつ座」の文字が入ったお揃いのはっぴに身を包んでいます。こまつ座の公演では、必ずこのはっぴを着用されているそうです。

こまつ座による「イーハトーボの劇列車」上演は、今回が14年ぶりとなります。主人公は宮沢賢治。

「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」「セロ弾きのゴーシュ」「風の又三郎」など、彼の作品は教科書でも扱われる名作です。一方で、作品を知っていても彼の生き方については知らないという人も、きっと少なくはないはずです。

宮沢賢治は、明治29年、岩手県花巻市に生まれました。彼の父親は地元では有名な資産家。お坊ちゃん育ちの賢治ですが、質屋という家業に疑問を抱き、百姓に生まれたかったと言って、父親と対立します。

そんな折、東京で日本女子大学に進学した妹・とし子が入院。見舞いを目的に、上野行きの夜行列車に乗り込みます。初めての上京で、賢治は東京に自分の理想郷を描きました。


大好きな音楽を聞く。エスペラント語の勉強をする。家の重圧から逃れ、父の下を離れ、自立をする。自分にとっての、真の生き方を見つけ出す――。賢治19歳、大正5年のことです。
しかし賢治は、東京に理想郷を求めては挫折を繰り返します。
やがて故郷に理想郷を見出す賢治の前に、東京から花巻、そして花巻から東京への列車の中で現れる童話の登場人物たち。


そして挫折の度に突然やって来る、赤い帽子の車掌。彼から手渡される「思い残し切符」とは一体……?

観劇した後は、とても美しい物語を読んだ後の、すきとおった風が心の中に吹くような爽やかな気分になりました。

「雨ニモマケズ」という大変有名な詩がありますが、平凡な農民の姿を詠って「そういうものに私はなりたい」と締め括ったその詩の心を、ひしひしと感じる作品でした。

「行きたいけれど東京は遠い」という方には、東京公演後に控えている、兵庫公演、山形公演、宮沢賢治の故郷である岩手公演がオススメです。詳しい日程・会場は下記webサイトからどうぞ。
井上ひさしや宮沢賢治作品を愛読書にしている方、美しい日本語を聞きたい方、少し遠出をして綺麗な景色でも見に行こうかな……という方、是非劇場まで足をお運びください!

これから寒い季節になりますが、「イーハトーボの劇列車」が雨ニモマケズ 風ニモマケズ、多くの方々に宮沢賢治のメッセージを運ぶことでしょう。

レポーター:広報企画部 M.N
舞台写真撮影:谷古宇正彦