コトブキシーティング株式会社

ホール・劇場・学校・スタジアム・映画館など、公共施設のイスやカプセルベットの製造・販売

移動観覧席・ディバイダーの導入により
学生や地域住民の多目的な活用が期待される大学体育館

インタビュー / 2019.8.8

体育の授業や式典などに使用する体育館や講堂は、学校にとっては欠かせない空間です。しかしどちらも大人数を収容するための広いスペースが必要な割には、教室等に比較すると利用頻度が低い場所でもあります。こうしたことから一つの広い空間を多目的に活用し、体育館と講堂の機能を両立できる施設を備える学校が増えてきました。

2017年3月に完成した常磐大学・常磐短期大学の体育館は、移動観覧席と大型電動間仕切「ディバイダー」を導入しました。電動で客席を設置し、空間を仕切ることで、目的に応じた様々な活用ができます。さらに、震度7クラスの揺れにも耐えうる耐震構造で、災害時の対策にも配慮されています。水戸市と学校法人常磐大学は、体育館の竣工を機に「災害時における応急活動の協力及び敷地・施設の使用に関する覚書」を交わしており、大火災発生時に一時避難者を受け入れる広域避難場所として「見和グラウンド」、その他災害時の緊急避難場所として「常磐大学・常磐短期大学体育館」が指定されました。

今回は、地域の防災拠点としての役割も担う新体育館建設の経緯、また多機能な設備を生かした現在の活用内容についてお話を伺いました。

学校法人 常磐大学 施設設備課 統括根本 知計氏

学校法人 常磐大学 施設設備課 統括補佐佐川 正志氏

水戸市の防災拠点としての機能を備えた新体育館

――体育館を新築した経緯についてお話しいただけますでしょうか。

根本
2011年の東日本大震災で被災したことをきっかけに、本学も耐震診断を行いました。以前の体育館は新耐震基準 より前の昭和47年に建てられたものだったので、やはり基準を満たしていませんでした。
そこで、水戸市からは以前より災害時の連携についてお話をいただいていたこともあり、地域貢献という意味も含めて、地域の防災拠点としての役割も担う体育館として建て替えようということでスタートしました。
しかし、今ある建物を解体して作り直すとなると、工事期間中は体育館が使えなくなってしまいます。通常でしたら代替施設として地域のスポーツ施設等を利用させてもらうという選択肢もあるはずですが、今回は最寄りの公共施設が2019年開催の国体に向けて建て替え中のため使えない状況でした。そのため、もともと本学の駐車場だった場所へ新たに建てることになったのです。ちなみに旧体育館は、常磐学園創立50周年記念体育館(竣工:1971年)としての歴史もあったので、現在は建物の一部を記念に残し、屋外ステージとして活用しています。
佐川
防災拠点としての機能は、今回新たに設けたものです。防災倉庫のほかに、体育館の隣接地に井戸を掘ったり、屋外に簡易トイレを設置できる機能も設けました。下水道に直結するマンホールを設け、蓋を外してそこにテントを建てれば簡易トイレとして使用できます。井戸水ともつながっていますので、ポンプで水を汲み上げ直接下水に流すこともできます。
根本
東日本大震災の際、インフラである電気・ガス・水のうち、最後まで困ったのは水道でした。そのため今回は、避難時の生活用水対策にも力を入れ、特に備蓄する飲料水についてはかなりの数を確保しました。特に水戸市から具体的な要望があったわけではありませんが、本学だけでも3000人の学生がおり、その安全を確保しなければならないので、しっかり備えようという判断のもと実現しました。

新設した、常磐大学・常磐短期大学 体育館

※新耐震基準:1978年に発生した宮城県沖地震をふまえて、耐震基準を大きく見直した改正建築法が1981年(昭和56年)に導入された。

――計画から竣工までの期間はどのぐらいかかったのですか。

根本
構想から1年半ぐらいで完成しました。耐震が理由でしたので時間的な猶予はなく、短期間での竣工となりました。
佐川
計画が決まってからは、せっかくなので新しい体育館で直近の卒業式、それが無理であれば入学式に使いたいという目標で進めました。結果的には卒業式には間に合わず、2017年度入学式にぎりぎり間に合いました。

多目的な活用を想定し、移動観覧席とディバイダーを採用

――今回は約600席の移動観覧席を導入していただきました。

根本
体育館ではありますが、本学が体育館で行っている行事は体育の授業、部活動、課外活動のほかに、様々な式典(入学式・卒業式)があります。また短期大学に保育士を養成する幼児教育保育学科があり、その学生の研究発表会の場としても使っています。そのため体育館には、本来の体育館としての機能、式典の機能、発表の場となるステージの機能がなければいけません。これまで式典を行う際には、数百または千以上のイスを職員が人力で並べていました。
佐川
通常の体育館は、ステージの下に引き出し式でイスが保管されていることが多いと思いますが、前の体育館は古かったのでそうした機能もありませんでした。行事のたびにステージの下の地下室のようなイス置き場からイスを担ぎ出して並べるのですが、これを年に数回行うのはかなり大変な作業でした。イスを出す作業は業者さんにお願いすることもありましたが、並べるのは職員の仕事。半日かけてイスを並べて、また半日かけて片付けるということで人手もかなりかかり、なんとか解消したいと思っていました。
少し前まではボタン一つで壁からイスが出てくるなどということは思いもよりませんでしたが、最近の公共施設で可動式のイスが導入されているのを見ていたので、新築にあたってぜひ導入したいと思いました。
根本
卒業式や入学式の際は1,500~2,000席ぐらい必要なので、今もステージ前にイスを並べてはいますが、移動観覧席を入れたことでイスは並べる作業はかなり減りました。

座席は2階の固定席と移動観覧席を合わせて約600席

――大学体育館としてディバイダーを導入し、さらにスクリーンとして活用していただいている例は、弊社の納入事例としてもまだ多くありません。ディバイダーを採用された理由を教えてください。

根本
毎年、保護者の方々にお集まりいただく「保護者会」を開催しています。これまでは大講義室などで開催していましたが、人数に対しスペースが狭いということもあり、体育館で開催できるようにしようということになりました。
佐川
保護者会は、日頃学生が学んでいる環境や、大学・短期大学における取り組みや指導内容などについて保護者の方に知っていただく貴重な機会で、大学にとっては大事な行事となっています。ただ、保護者会は500~600人程度の参加者なので、体育館全部を使うと広すぎるという課題がありました。
根本
それで保護者会のようなイベントの時に、体育館の半面をホールのような使い方ができるようにディバイダーを採用したのです。保護者会で講演や説明を行う際には、プロジェクターが必須です。体育館全体を使う時はステージの両側のスクリーンに投映しているのですが、半分しか使わないときに真ん中に投映するにはどうしたらいいのかとなった時に、広いスペースを区切って使うための間仕切りとスクリーンの両方の機能を持つものがないのかを探すことになりました。

――ディバイダーのことは、どのような経緯で知ったのでしょうか。

根本
実は本学に、一級建築士の資格を持った職員がいます。今回の体育館の計画メンバーにも入っており、その職員がディバイダーの情報を入手し、「これだ!」ということになりました。もともと本学は、教室の机やイスでもコトブキシーティングさんとはお付き合いがありましたので、そういう関係性もあって話が進みました。
佐川
通常ディバイダーを導入する場合、コートを仕切って競技を別々にできるようにとか、ボールが隣のコートに飛んでいかないようにという目的で設置することが多いかもしれませんが、本学の場合は行事で利用する目的が大きかったと思います。そのためスクリーンとしての機能を重視し、ディバイダーの下半分は不透明の素材で落ち着いた色を選んでいます。

ディバイダーの下半分はスクリーン機能を考慮して落ち着いた色のソリッド素材、上半分は開放感のあるメッシュ素材で構成

――保護者会ではどのような使い方をされているのですか。

根本
保護者には移動観覧席に座っていただき、ディバイダーの前に演台を置いて講演しています。映像は観覧席の一番後のセンターにプロジェクターを設置し、ディバイダーの下半分に投映します。向こう半分のステージ側は使いません。
あとは500~600人の保護者が入口で靴を脱ぎ履きするのは大変なので、シートを敷いて玄関からトイレ、通路などの間を土足で歩けるようにしています。

ディバイダーへの投映は2階席真ん中の通路に台を置き、そこにプロジェクターを乗せて行う

様々な機能をもつ多目的スペースとして地域からも期待

――この体育館には他にも様々な機能、設備がありますね。

根本
体育館機能としての規模は以前とほぼ一緒ですが、これまでは別の場所にあったトレーニング室を併設したり、ミーティング室、多目的室など新たな施設も追加しました。多目的室は式典の際の控室や会議などに使っているほか、ダンスのレッスンもできるように木の床と練習用の鏡とバーも備えています。こうした設備導入については、実際に体育で使っている先生方や学生の意見も聞き、できる限り応えるようにしました。
佐川
色々な意見を調整するのは大変でしたが、少しずつは要望を取り入れることができたので、前に比べたら格段に多機能になったと思います。

最新のトレーニングマシンを備えたトレーニング室(1階)

ダンスレッスンもできるように練習用の鏡とバーを備えた多目的室(2階)

――現在の体育館の利用状況を教えてください。

根本
大学・短期大学では、お話ししたように運動、式典、保護者などのイベントで使っています。大学・短期大学以外では、本学が運営する高等学校の課外活動や部活動、卒業式・入学式などでも使っています。その他に想定されているのは学会関係です。本学にはもう一つ講堂があるのですが、そこで人数が収容できないときには利用する予定です。
佐川
ディバイダーをスクリーンとして利用するのは主に保護者会ですが、地区のPTAの集まりでも使ったことがありますね。
根本
地元学校のPTAの方々による連絡協議会というのがありまして、その総会などで使っていただいたことがあります。500~600人が参加されていました。大学というのは地域との連携が大切ですし、地域の方々もなかなか大学の中に入ることはありませんので、施設を見ていただくいい機会になったと思います。
佐川
利用回数を重ねるごとに施設を見る人が増えるので、色々な団体から使わせてほしいという声はいただいています。地元のドッジボールやバドミントンのサークル、また茨城ロボッツというBリーグ所属の地元プロバスケットボールのチームからもお話がありました。
体育館本来の目的となる授業や部活動を優先しなければいけないので、なかなか貸し出しできる時間が少ないのが実情ですが、できるだけ地域へも開放していきたいと思っています。

――様々な機能を持つ体育館ですが、今回新設されたことで特に効果的だったことはありますか?

根本
最も大きいのは、やはりイスを出す手間が少なくなったことですね(笑)。
そしてもう一つ良かったことは、最新の設備を様々な方に見ていただくことが、常磐大学のイメージ向上、インパクトにつながっていることです。本学は水戸市との連携が特に強く、市から期待されている部分も多くあります。今回のような取り組みを通じて、地域との連携も推進していければと思っています。

――確かにこの新体育館を通じて、学生や地域のことを考えて積極的に新しいものを取り入れようとする大学の姿勢が見える気がします。今後も先進的な事例として、最新の設備を生かし施設の有効活用に取り組んでいただければと思います。本日はありがとうございました。

取材日:2019年6月


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