コトブキシーティング株式会社

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カプセルベッドをバス営業所の仮眠室に導入良質な睡眠で運転士の安全な運行をサポート

インタビュー / 2019.6.28

カプセルホテルで利用されているカプセルベッド。実は近年、カプセルホテル以外での需要も高まっています。その一つが、消防・警察・病院・交通・物流など、24時間体制で勤務が行われる業種の従業員仮眠室です。業務の内容上、勤務の合間に睡眠をとって体力や集中力を回復しなければならず、仮眠室の環境は従業員の健康管理や業務の質にも大きく関わってきます。しかし従来多かった大部屋や相部屋では、物音や光が気になりなかなか熟睡できないという声も多く聞かれ、遮音性や遮光性に優れ、個室に近い空間を確保できるカプセルベッドが注目されているのです。

ここで紹介する西日本鉄道(株)桧原自動車営業所は2019年3月に完成、仮眠室に40床のカプセルベッドを導入しました。西日本鉄道(株)では、福岡県を中心とした一般路線バスと九州各県および本州を結ぶ高速バスを運行しています。桧原自動車営業所は、地域の生活を支える足として重要な役割を担う一般路線バスの営業所であり、12の路線を担当、約150名の運転士が利用する中核施設です。

今回は、桧原自動車営業所の建て替えを担当された西日本鉄道株式会社 自動車事業本部 営業部営業第一課の生田尚義氏に、カプセルベッド導入の経緯、バス業界における仮眠室の位置づけや働き方改革などのお話を伺いました。

一般路線バス運行において重要な役割を担う仮眠室

――運転士の方々は、どのような時に仮眠室を利用されるのですか。

一般路線バスは公共交通という性格上、早朝・深夜の業務が避けられません。運転士は早朝の出社に間に合わない、深夜の勤務で自宅に戻れないなどの場合があるため、夜の仮眠場所が必要になります。日中は、一乗務ごとに休憩を入れるので運転と休憩の繰り返しになり、その際も休憩室や仮眠室を利用します。

またバス運転士は変形労働時間制※1という不規則な労働時間を採用しているため、乗務の合間に仮眠を取ることもあります。その他にも、大雨など緊急時には多くの運転士が営業所で待機する場合があり、仮眠室は緊急時の待機場所としての役割も担っています

――今回は桧原自動車営業所とアイランドシティ自動車営業所の2つの営業所の仮眠室に、各40床のカプセルベッドを導入いただきました。

桧原自動車営業所は老朽化した既存の建物の建て替えで、アイランドシティ自動車営業所は2つの営業所を統合して新たに開設しました。当然ですが、一度建てた営業所は何十年も使い続けます。そのため、今対応できる最善の設備を導入したいと考えました。

現在のバス業界は、運転士の不足や高齢化から働き方改革が大きな課題となっています。各社ともに様々な施策を行っていると思いますが、当社では乗務員の労働環境改善に特に力を入れており、設備面の改善にも取り組んでいます。今回のカプセルベッドの導入は、こうした働き方改革の一環です。

――導入の決め手となったのは、どのような点ですか。

バス運転士の労働環境上、仮眠室はとても重要な場所となるため、一人ひとりが本当にくつろげるプライベートな空間を提供したかったというのが一番の理由です。以前の仮眠室は、パーテーションで部屋を区切ってベッドを置いていましたが、隣の人の声や物音が聞こえる状況でした。しかしカプセルベッドなら、出入口のロールスクリーンを下せばほとんど個室に近い状態になり、音や光も気になりません。

そしてもう一つは、スペース効率という意味で非常に魅力的だった点です。カプセルベッドは上段・下段の2段になるため、同じスペースなら普通のベッドの2倍の数を設置することができます。また営業所の建て替えに際しては、不足しているバスの駐車スペースを増やしたいという目的もありました。駐車スペース確保のために建物の建築面積を減らしましたが、その代わりに2階建てから3階建に変更して延床面積を確保。仮眠室も以前より面積は減ったものの、カプセルベッドにすることで同等の床数を確保することができました。

※注1
1年単位の変形労働時間制の場合、1カ月を超え1年以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、業務の繁閑に応じ労働時間を配分することを認める

現場の声を反映し、カプセルベッドの導入を決定

――カプセルベッドに注目したきっかけは何だったのでしょうか。

当初はプライベート空間重視の観点から、個室も検討していました。しかしスペース効率を良くしたいというこちらの要望に対し、設計事務所からカプセルベッドの提案があったのです。そこで早速、実際に使用する運転士にも同行してもらい、カプセルベッドが導入されている他社の施設を視察しました。

正直、最初にカプセルベッドと聞いた時は、仮眠室にカプセルベッドを置くという発想が全く意外でした。私も他のメンバーも昔のカプセルホテルのイメージしかなかったものですから。しかし実物を見て、想像と違っていたことに驚きました。広さも十分でしたし、上品で落ち着いたデザインは今回の目的であったリラックスできるプライベート空間にぴったりだと思いました。

――昔のカプセルベッドは「狭い」という印象が強かったと思いますが、現在はスクエアな形状で広さも十分にあります。体験された皆さんからも「意外と広いですね」という声が多かったですね。今回導入いただいた「SPACE Dシリーズ」は、落ち着いた色彩や柔らかい間接照明を使用しており、短い時間でもリラックスしていただけると思います。

視察以外にも実物を用意していただいたおかげで、20名以上の運転士に体験してもらえたので、皆が納得したうえで導入することができたと思います。例えば2段になっていることで、上段の上り下りに危険はないのかという意見が出ましたが、これまで事故事例はないとご説明いただき、納得してもらえました。

また、バスの運転士には睡眠時無呼吸症候群(SAS)※2の検査を実施しており、睡眠時無呼吸症候群の運転士には睡眠時に、「CPAP(シーパップ)※3療法」のための鼻マスク着用を義務付けています。この機材は枕より高い位置には設置できないためその対応に苦慮しましたが、カプセルベッド内に専用の棚を設置できるように対応いただけたことで、無事解決しました。

※注2
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に舌が喉の奥に沈下することにより気道が塞がれ、睡眠中に頻回に呼吸が止まったり、止まりかけたりする状態(睡眠呼吸障害)のために質のよい睡眠が取れず、日中の強い眠気や疲労等の自覚症状をともなう病態。運転中に突然意識を失うような睡眠に陥いることもあり、対策が求められている
※注3
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)とは、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法

CPAP療法の機材を置く差し込み式テーブル

――今回は10床×4室で合計40床のカプセルベッドを導入いただきましたが、現在の利用状況はいかがですか。

まだスタートから間もないですが、とても好評です。これまでのパーテーションで区切られたベッドと違って、カプセルベッドは遮光性・遮音性が高く、換気扇で空調も管理できるため、ストレスなく睡眠をとることができると思います。

実際に利用した人の感想としては、「落ち着く」という声が多いですね。早朝・深夜担当の運転士が夜に宿泊するケースが最も多いですが、その他にも乗務の間の休憩時に軽い睡眠をとる場合もあります。また個室に近い空間なので、眠らなくても体を休めるために横になる、一人の空間でくつろぐなど、各々が気兼ねなく自由に過ごせる点も人気の理由だと思います。

――よく眠れすぎて、寝過ごすなどということはありませんか?

その点は大丈夫です(笑)。受付で誰がどこに寝ているかを把握していますので、運行管理者が時間をチェックしています。

若者にもアピールできるこれからのバス営業所のモデルケースに

――桧原営業所は、仮眠室以外の設備も非常に充実していますね。

建て替えにあたっては、どのような設備があれば快適に過ごせるのかを乗務員にヒアリングし、十分検討したうえで様々な設備を導入しました。1階に広い休憩室と喫煙室、2階にはランチルームやランニングマシンを備えたフィットネスルーム、女性休憩室、3階には4室の仮眠室のほか、談話室、洗面・洗濯室、浴場などを備えています。建物についても若い人や女性にも親しんでもらえるデザインに配慮し、明るいカラーやアイコンなどを採り入れ、お洒落な空間づくりを意識しました。

――バス運転士の実情として、40歳代以上が全体の約3/4を占め、30歳代は約20%、20歳代はわずか4%未満という調査結果※4もあるようですが。

バス業界は現在、慢性的な運転士不足に陥っており、労働力の確保が厳しい状況です。年齢的にも高齢化が進んでいるため、若い世代への訴求が今後の大きな課題です。その意味でも、今回のような魅力的な営業所づくりは若者へのアピールにもなるのではと期待しています。

――路線バスは誰もが利用する生活の足です。高齢化が進めばその必要性はますます高まり、運転士不足は私たちにとっても他人ごとではありません。

一般路線バスの使命は、「安全に、時間通りにバスを運行する」ことです。運転士は、何十人ものお客様の命を預かり、常に集中し緊張して乗務しています。だからこそ、しっかりリフレッシュして次の乗務に備えられるように、睡眠、食事、適度な運動など体調管理に必要な環境を提供するわけですが、その中でも睡眠は非常に重要な要素です。良質な睡眠を取り、万全の状態で乗務することによって、お客様により質の高いサービスを提供できるようになります。

現在当社には16のバス営業所があります。人の命を預かるという使命を全うしてもらうためにも、今回の取り組みをモデルケースとしてこれからも様々な改善に取り組んでいきたいと考えています。

――こうした取り組みがバス業界に良い影響を与え、ひいてはバス運転士の方々の増加、多くの路線バスの維持につながることを期待しています。本日はありがとうございました。

※注4
「バス運転者の労働時間等についてのアンケート結果」平成29年6月30日 国土交通省自動車局安全政策課 参照

取材日:2019年3月20日


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