「世界一美しい響き」を基本コンセプトに掲げた、日本を代表するクラシック・コンサートホールの一つ、サントリーホール。5周年ごとに中規模リニューアルを、10周年ごとに大規模リニューアルを実施しています。2016年に迎えた開館30周年には「伝統の継承と革新」というコンセプトを柱に、大規模な工事を行いました。コンセプトに沿って立てられた三つのテーマ「伝統の継承 ― 響と意匠」「ダイバーシティデザイン ―すべてのお客様のために」「設備のさらなる充実 ― 次世代音楽空間創造へ」に基づいて、客席・舞台・照明やエントランスなど、改修箇所は全館に渡りました。2,006席の客席が直面したテーマは「伝統の継承 ― 響と意匠」です。竣工時と変わらぬ素材と見た目を維持しながら、繊細なリニューアルが求められました。
客席のイスで最も目を惹く印象的な特徴は、ヴィンヤード形式にちなみ、ワインレッドで彩られた、ぶどう柄のオリジナルデザインです。新しく製作し直し、張り替えが行われました。
イスの背・肘・脚にふんだんに使われている天然木は、ひとつひとつのパーツの細かな傷が補修され、磨き上げ再塗装されました。真っ直ぐに伸びた背もたれに張ったクッションも、中のウレタンが入れ替えられたことで、オープン当時と変わらないボリュームが復活しています。
イスに少しの変化が生じれば、吸音や反響の度合いが変わり、ホール全体の音の響きに大きな影響を与える可能性があるため、最新の注意が払われた客席のリニューアル。変わらぬ「世界一美しい響き」が、今日もホール全体に響き渡っています。
撮影協力:サントリーホール、NHK交響楽団