客席や空間の使い方を柔軟に変える、新しい講堂・ホールの創り方

2019.01.29
事例特集
※2023年5月より、ディバイダ―はディバイディングカーテン(愛称:SIKIRUTO)に変更しております。
 ここでは、記事公開時の呼称をそのまま使用しております。

講堂やホールは学校生活の節目に、多くの生徒が一同に会する、広やかな空間です。入学式や卒業式など学校行事として欠かせない式典や、講師を招いての講演会、文化祭など、学校を象徴するイベントが多く行われる場所であり、卒業後もなお、かけがえのない思い出として残る空間でもあります。学校を管理・運営するスタッフにとっても、学校のイメージを表す意義深い場所として、思い入れのある施設とも言えるでしょう。そして近年では、これまでの講堂・ホールとしての利用に留まらない、多目的な活用が求められるようになりました。周年記念事業などの節目に新たに建設する際には、講堂・ホールをどう使うのか? 生徒・学生にとってより身近な空間にするためには、どうすれば良いのか? 学校の特色を反映した、多くのアイディアが集まります。従来とは一味違う講堂・ホールを目指し、新たに講堂・ホールを構えた中学校・高等学校をご紹介します。

01新たなキャンパスのホールは、3種のイスで多目的空間に変化

立正中学校・高等学校 馬込キャンパス
行学ホール

立正大学付属立正中学校・高等学校は、2013年春、より充実した学習環境整備のため、新たなキャンパスを構え拠点を移しました。文士や芸術家たちに愛された歴史文化の薫り高き町・東京都大田区に構えた、馬込キャンパスです。

キャンパス内の東側に位置する芸術棟にあるのは、623席を有する多目的ホールです。ホールの名前は、建学の精神を日蓮聖人の人格と教えにおいた教育目標「行学の二道」にちなんだ「行学ホール」。片側の壁はガラス張りになっており、キャンパス内の緑を臨むことができます。日差しの差し込む、明るい空間です。

このホールを「多目的ホール」たらしめているのが、客席を構成しているスタッキングチェアと移動観覧席です。客席を必要とする行事以外でもホールを使えるよう、これらの可動席が選ばれました。前方に並ぶスタッキングチェアは手動で、移動観覧席は電動で収納ができるため、客席が必要ない時はフラットなスペースを生み出せます。軽運動やクラブ活動での活用を見込み、フロアにはコートラインも引きました。移動観覧席の後方には固定席が3列並んでおり、スタッキングチェアと移動観覧席を収納した際にも、平土間空間を臨む観覧用の席として活用することが可能です。

02固定席と可動席を仕切って、上映会やプレゼンテーションにも

広島城北中・高等学校 鯉昇館
メイプルホール

広島県内の中高一貫男子校の中でも屈指の伝統校、広島城北中・高等学校。2016年4月、7番目の学び舎となる新校舎「鯉昇館(りしょうかん)」が竣工しました。1階のメイプルホールは、講演会や説明会などの客席が必要なイベント時だけでなく、イスを使用しない自由な学習の場としても機能することを目標に設計されました。

可動席が並ぶ居室の一般的な使い方は、イスを並べるパターンと、可動式のイスを収納して前方スペースを広くフラットに利用するパターンの二つのケースが主流ですが、メイプルホールは一味違います。前方は席数を自由に調整できるスタッキングチェア、後方は階段状に並んだ劇場・ホール用の固定席で構成、さらにその境の天井部に電動間仕切「ディバイダー」を設置し、間仕切を下ろすと、空間を分割して使えるように設計しました。

前方・後方で異なるイスを採用したことにより、分割した際の居室の印象がガラリと変化します。片側ずつ異なる授業を行うことはもちろん、一方を発表の場に、もう一方を控え室として使うことも可能。さらにディバイダーはスクリーンの役割も果たすため、資料を投影して上映会を開いたりプレゼンテーションを行ったりと、一つの空間が何通りものスペースに変化します。

03展開・収納が可能な客席に、その場でノートを取れる肘メモ台も設置

水城高等学校
山野内記念講堂

茨城県水戸市の水城高等学校では、2014年春、創立50年を記念し「次なる50年」を意識した新校舎が竣工しました。これから先の半世紀、生徒たちを取り巻く学習環境やカリキュラムにも、大きな変革があることが予想できます。式典や演奏会だけの利用に留まらず、講堂の多目的な活用を見込み、可動式の客席の導入が決まりました。

講堂は、学校創設者・山野内四郎氏に由来して「山野内記念講堂」と名付けられた、学校を象徴する建物です。ステージの奥の幕を上げると、情緒溢れる美しい日本庭園が広がっており、水城高等学校の歴史と文化を感じることができます。

客席は、前3列がスタッキングチェア、その後ろに移動観覧席、さらにその後ろに9列の固定席が並んだ構成です。スタッキングチェアと移動観覧席を収納すれば、筆記ができる客席もフラットなスペースに早変わり。たちまちアリーナ空間として使用することができます。

講演会に参加した生徒がその場でスマートに感想をまとめられるよう、全ての席に収納式の肘メモ台が設置されました。3種類のイスが並んでいますが、張地は鮮やかなブルー、背面ははつらつとした学校生活を思わせる明るい色の天然木と、デザインを統一することで、半世紀の歴史を持つ学校にふさわしい、整然とした空間を創り上げています。

043台の移動観覧席とスライディングウォールで、ホールにも小教室にも

東北高等学校 中央校舎
多目的ホール

東北高等学校は、多くの国民的スポーツ選手を輩出してきた、宮城県の伝統校です。2017年4月、53年にわたって同校のシンボル的存在であった小松島キャンパスの本館が、中央校舎として生まれ変わりました。2021年の大学入試改革を見据え、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業や、授業外学習のために整備された先進的な施設です。

3階の多目的ホールは、課外活動での利用を目指し、様々な授業形態にも対応できるホールとして設計が進められました。客席を構成したのは、空間の多目的活用を担うイスとして全国の公共施設に普及している移動観覧席。電動操作で展開・収納ができるため、客席の要不要に合わせて手軽に設営が可能です。

ホールに移動観覧席を導入することは、多目的に使える客席づくりとしてメジャーな手法ですが、東北高等学校の多目的ホールの特徴は、客席を3ブロックに分け、80席の移動観覧席を3台導入したことです。スライディングウォールで仕切ると、三つの教室として利用できるようになります。各居室を別々に使うことはもちろん、一つ目の教室はフラットなスペースとして、二つ目と三つ目の教室を繋げて160席の大教室としてなど、組み合わせによって何通りもの居室利用が可能になります。学年集会やガイダンス、学校説明会の時には、スタッキングチェアを並べて、最大330席のホールに大変身。新しい学習スタイルに柔軟に対応することが期待されています。

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

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