東京オリンピック・パラリンピックを見据えた取り組みが広がる! スポーツ施設のバリアフリー

2019.01.22
コラム

いよいよ東京オリンピック・パラリンピックまで、あと1年となりました。

世界中から人が集まる国際的イベントを目前に、今、全国各地で「進化したバリアフリー」への取り組みが急ピッチで進んでいるのをご存知でしょうか? その波は、電車やバスなどの公共交通機関はもちろんのこと、宿泊施設や会場づくりにも及んでいます。バリアフリーとは、高齢者や障がい者が社会生活を送るうえで障壁となるものを取り除くこと。誰もが利用しやすい施設づくりのために、欠かすことのできないテーマです。

スポーツ施設におけるバリアフリーの取り組み

スタジアムやアリーナにおけるバリアフリーの取り組みは、実は東京オリンピック・パラリンピックの開催決定以前から進められていました。現在では、各施設がホームページ等でバリアフリーマップを公開し、車イス等でも利用しやすい施設であることを、積極的に打ち出しています。

各施設が取り組んでいる主なバリアフリー対応として、以下のような内容が挙げられます。

  • 専用駐車場の設置
  • スロープの設置
  • 出入口の幅員の確保
  • 廊下の幅員の確保
  • エレベーターの設置
  • 多目的トイレの設置
  • 客席内の車イススペースや席の設置

このように、スタジアムやアリーナへのアクセスや館内の移動などのバリアフリー化は進んできている一方、「誰もが見やすい観客席づくり」に於いては、まだまだ整備途上の施設が多いようです。

アメリカや欧州諸国を手本にした客席づくり

日本では、車イス使用者や障がいのある来場者は、車イススペースと銘打たれた、一定の数少ない場所でしか見ることができない施設がほとんどです。対して、スポーツ大国アメリカをはじめとした欧州諸国では、複数あるエリアの中から好きな場所を選んで見ることができます。「誰もがスポーツを楽しめる施設づくり」に対する考え方は、まだまだ世界水準から遠く離れていることが分かります。

そのような現状を背景に、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、大会時の整備指針として「Tokyo 2020 アクセシビリティ・ガイドライン(以下、ガイドライン)」を策定しました。環境整備を整えることで大会へのアクセスの機会を増やし、障がいの有無に関わらずすべての人々が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現に貢献することを目指しています。

国際パラリンピック委員会の承認を受けた指針が示されたガイドラインでは、例えは、車イス等のお客様が利用できるアクセシブルな座席数を全体の1.0%-1.2%(都の福祉のまちづくり条例では1以上)と示すなど、障がい者も健常者と同じように観戦できるための施設づくりを目指しています。

Tokyo 2020 アクセシビリティ・ガイドラインに基づいた会場づくりを行った、武蔵野の森総合スポーツプラザ

東京オリンピック・パラリンピックの会場の一つとなる、2017年11月にオープンした「武蔵野の森総合スポーツプラザ」では、このガイドラインに準じた会場づくりが行われています。

車イススペース

エリアを数多く設けることで、観戦場所の選択肢が増加。同伴者用のスタッキングチェアは仮固定式のため、動かして車イス同士が横に並ぶことも可能。手すりはガラスで見通しも良い。

メインアリーナ:全69席(21エリア)、サブアリーナ:全4席(4エリア)、プール:全2席(2エリア)

ボックス席

ガラスと壁で四方を囲んだ客席は、乳幼児連れや知的・発達・精神障がい者などが周囲に気兼ねしがちなシチュエーションを削減する

メインアリーナ:全31席(8エリア)、サブアリーナ:全4席(1エリア)、プール:全2席(1エリア)

付加アメニティ席

隣の席と距離を設けることで、補助犬を連れた観客や体格の大きい観客も、隣席に遠慮せずに利用できる。使用しない時は席を設置できるためフレキシブルに対応可能

メインアリーナ:全62席(22エリア)、サブアリーナ:全4席(4エリア)、プール:全2席(2エリア)

手がかり

客席内の縦通路には、階段の昇降時に助けとなる手がかりを各段に設置することで、大きな段差でも歩きやすくなりました

その他(扉の手すり)

アリーナの扉は利き手の違いに配慮し、ハンドルの向きを左右反対に設置

武蔵野の森総合スポーツプラザでは、オープン以来、パラスポーツの大会やイベントも行っています。

2020年に控えた東京オリンピック・パラリンピック、そして、誰もが楽しくスポーツを「する」「観る」ことのできるこれからのスタジアム・アリーナづくりに向けて、幅広いバリアフリー化を進める施設が日本中に増えていくことが期待されます!

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