地方議会の議場は、イスと机で変わる!地域と住民に開かれた議会づくりに欠かせない議場家具の機能性

2018.07.30
事例特集

新しい議場づくりは、各地域の庁舎が持つ大きな課題です。議決機関としての機能を有し、住民に開かれ、住民が参加しやすい議場づくりはもちろん、議会以外の多目的用途で利用できる空間への進化も求められています。近年は、耐震性や防災拠点などの課題解決のために、市区町村で庁舎や役場の建て替え・改修工事が盛んに行われています。また、これを機に効率的な議会運営や市民にとって身近な空間づくりの整備を行う自治体も多く存在しています。今回は、そんな「開かれた議会づくり」を掲げた地方の議場をご紹介します。市民が参加・利用できるよう配慮した、機能性の高い机とイスの並ぶ議場です。

01災害時の対策本部利用も想定した、すべての席が可動する議場が誕生

刈羽村役場
議場

刈羽村役場 議場
刈羽村役場 議場
刈羽村役場 議場
刈羽村役場 議場
刈羽村役場 議場

旧役場の老朽化や耐震強度問題を乗り越えて、地域の新たな交流拠点として2016年2月に開庁した、新潟県刈羽村の役場。新役場の議場に求められたポイントは、多機能性でした。通常の議会における利用はもちろん、災害時の対策本部として、また議会開催時以外には多目的に使えるミーティングスペースとして、空間レイアウトの自由度が高いスペースを創り上げる必要がありました。

そこで導入が進められたのが、可動式の机とイスです。イスは全てキャスター式、机にもキャスターがついていますが通常は脚部の見えない箇所に収納されており、机の天板の裏側に設けられたレバーを操作することによって、初めてキャスターが出現します。そのため動かさない時には安定感のある固定式の机同様に使用することができます。机とイスが段と一体となった議長席も、段ごと移動が可能。万が一の事態が起こった時には、すぐに災害対策本部用のレイアウトに切り替えることができます。

傍聴席のイスも可動式です。市民が座る席として、長時間座っても疲れにくい快適さが求められました。そこで、全国の劇場やシアターなどの客席として利用されている、劇場用のスタッキングチェアを導入。ボリュームのあるクッションと、人間の背中に沿ってカーブを描く三次元曲面の背もたれが、安定した座り心地を提供します。

キャスター付の机とイス、移動ができるスタッキングチェアの組み合わせにより、非常時でもレイアウト変更の自由度が高い議場が完成しました。

02馬蹄形の議員席と同じフロアに傍聴席を設置し、市民と議会の距離を縮めた議場

日向市役所
議場

日向市役所 議場
日向市役所 議場
日向市役所 議場
日向市役所 議場
日向市役所 議場

2018年5月、宮崎県日向市に新しい市役所が誕生しました。旧庁舎は50年以上にわたり大切に利用されてきましたが、老朽化が進み、耐震性への不安も背景に、建て替えが決定。東日本大震災を機に高まった防災拠点施設となる市庁舎の必要性、さらには多様化する行政需要へ対応する機能性を実現しています。

議員がより議会に参加しやすい環境を創り出すため、議員の机とイスのレイアウトには、馬蹄形が選ばれました。議員全員が最前列の席になるこの形は、前列の人の頭で視線が遮られることがないため、発言者の顔をしっかりと見ることができ、活発な議論のスムーズな進行が期待されます。机にもイスにも天然木がたっぷりと使われており、イスのワインレッドの張地と相まって、気品ある議場空間が創り上げられています。

以前の議場は、議会席と傍聴席のフロアレベルにかなりの差があり、傍聴者が議会を見下ろすような形でした。今回、議場とほぼ同じフロアレベルにすることで、より間近での傍聴ができるように改善。市民の代表である議員の真後ろに座るため、議会の一員かのように気が引き締まります。全席にメモ台が備えられ、メモを取りながらの傍聴も可能になりました。

市民参加に開かれた庁舎の明るく穏やかな議場で、2018年6月から市議会がスタートしています。

03家具も壁も動く可変式の議場は、ラウンジやテラスとも一体化する憩いの空間

新発田市役所(ヨリネス新発田)
議場

新発田市役所(ヨリネス新発田)議場
新発田市役所(ヨリネス新発田)議場
新発田市役所(ヨリネス新発田)議場
新発田市役所(ヨリネス新発田)議場
新発田市役所(ヨリネス新発田)議場

新潟県の新発田市は、市制施行70年を迎え、2017年1月4日に新しい市庁舎がオープンしました。建物は、周辺の商店街に高さを合わせた低層部と白い雲のように浮かぶ高層部、そしてその中間に挟まれた議会・市民交流スペースの三つの層で構成されています。建物内の各所にはWi-Fiを備えたラウンジもあり、地域住民の訪問を積極的に受け入れている、市民に開かれた庁舎です。

議場は、議員席と傍聴席の間のなだらかな弧を描いた仕切が特徴的な空間です。議会用の机とイスは全て可動式。自由に移動できるタイプでありながらも、議場という格式ある空間にふさわしい、重厚感のある仕様です。収納する際は専用の台車を利用します。議場専用のキャスターチェアは、イスの背もたれを座面の上に倒してから収納します。

議場家具を収納し、スタッキングチェアを並べると、議場はイベント会場に早変わり。さらに、傍聴席後ろのスライド式の壁を開くことでラウンジとその先のテラスとも一体となった空間が出現します。オープン以来、映画上映会やコンサート、地域のイベント、シンポジウム、タウンミーティングなど、新発田にまつわる多彩な催しが行われ、議員だけでなく市民にとっても大切な場所となっています。議会以外にも使用することを想定していたため、150インチのスクリーンや音響設備、可動ステージを備えており、結婚式としての利用も期待されています。

新発田の新しい顔の一つとして、にぎやかな交流の場となり、まちの活性化につながることが期待されます。

04四半世紀以上を経て今もなお市民に愛される、ホール機能を持った議場

大空町役場
議事堂文化ホール

大空町役場 議事堂文化ホール
大空町役場 議事堂文化ホール
大空町役場 議事堂文化ホール
大空町役場 議事堂文化ホール
大空町役場 議事堂文化ホール

北海道網走の大空町は、2006年3月、旧女満別町と旧東藻琴村が合併して誕生しました。新たな街・大空町の庁舎として選ばれたのは、旧女満別町の庁舎です。1階にある議事堂文化ホールは、議会開催の場でありながら、催し物がある時には小ホールに変身します。旧女満別町の時代に、町民の文化活動とアメニティの向上を図るため、「庁舎の議場を文化ホールとしても利用できるように」と、議場の多機能化を実現しました。

通常は議会用のイスと机が並ぶ議会空間が、小ホールに変わるために、小さいながらも大きな機構が備わっています。まず、議会用のイスと机を電動で昇降する床に乗せ、床下へ移動して収納します。この時点で、議会場はあっという間にフラットな平土間スペースへと変身。しかし客席をつくるためには、もう一段階作業が必要です。

次は、床下に収納していた客席用の移動席を、議会用の机とイスの代わりに平土間スペースへ並べます。そして最後に、後方の壁に収納されていた移動観覧席(ロールバックチェアースタンド)をリモコン操作で展開。こうして誕生した小ホールは、講演会やピアノの発表会、成人式の会場としても活用されています。

四半世紀以上も前に備わったこの機構は、市民に開かれた議場づくりの先駆けとも言えるでしょう。今もなお、市民に愛されている議場空間です。

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

一覧へ戻る