伊勢街道沿いの市内の中心部に佇む鈴鹿市民会館は、1968年に開館しました。開館50周年を目前に控えた2017年、耐震強度が問題視されていたロビーや客席の吊り天井の一新と、館内の整備のため、約1年間の休館が決定。最も大掛かりな天井工事の足場を確保するためには、客席のイスも取り外さなければなりません。客席のイスは、前回の改修工事時に入れ替えが行われてから約30年が経過しており、機能的な劣化や痛みが顕著だったため、鈴鹿市はリニューアルへ踏み切りました。
イスは席同士が鋼管の上で横1列に繋がった「連結管方式」から、頑丈なスチール製の独立脚方式へ変更。これにより隣席の振動を最小限に抑制し、堅牢性が大きくレベルアップしました。張地に採用されたのは、摩耗に強いモケット調の素材です。市の担当者とテキスタイルデザイナーの綿密な打ち合わせの元、デザインには市のシンボル花であるサツキを取り入れることが決まりました。
サツキの花が波打って流れていくような印象的なデザインは、市のキャッチコピーである「さぁ、きっともっと鈴鹿。海あり、山あり、匠の技あり」に感じられる山並みや海の波をもイメージ。このサツキ模様は、鈴鹿市民会館を象徴するデザインとして、館内のロビーや天井にも取り入れられています。イスのリニューアルを経て、テキスタイルの模様として生まれたサツキの花のデザインが、館内全体を彩る、鈴鹿市民会館のシンボルとなりました。