選手もファンも一体になれる競技場を目指して生まれ変わったサッカースタジアム

2018.04.19
事例特集

1993年に国立競技場で開幕したJリーグは、その規模も人気も、四半世紀を経て大きな進化を遂げて来ました。そしていま、新たなサッカースタジアム構想が、全国各地で生まれています。サッカーに興味がある誰もが足を運びやすく、そしてサッカーファンやサポーターが何度も通いたくなるスタジアムづくりのために、快適な観覧席は欠かせません。近年オープンしたサッカースタジアムの中から、より良い客席づくりに力を入れたスタジアムをご紹介します。

01ベンチ席だった観客席から、全席に背もたれとカップホルダーが付いたイスへ

南長野運動公園
総合球技場

南長野運動公園 総合球技場
南長野運動公園 総合球技場
南長野運動公園 総合球技場
南長野運動公園 総合球技場
南長野運動公園 総合球技場

南長野運動公園総合球技場の歴史は、2002年に遡ります。1998年の長野冬季オリンピックのメイン会場「長野オリンピックスタジアム」を含む南長野運動公園内の施設として、誕生しました。当時の収容人数は約6,600人と小規模なサッカー場でしたが、ホームチームであるAC長野パルセイロのJ1参入目標を視野に、施設の全面改築を実施。2015年3月にJ1基準を満たす約1万5,400人を収容可能な施設へと生まれ変わりました。こけら落としとして開催された、サッカーJ3・AC長野パルセイロのホーム開幕戦の来場者数は8,681人と改築前の収容人数を大幅に上回りました。地域の人々からも、街の更なる活性化へ先陣を切ると大きな期待が寄せられています。

リニューアルに際して、観覧席の充実は欠かせない課題でした。そこで、これまでベンチ席だった観客席は、背もたれとカップホルダー付きのイス席へと全席リニューアルを図りました。また、これまではなかった2階席の設置に加え、メインスタンド、バックスタンド、南北のサイドスタンドには屋根を設けました。
メインスタンドで目を引くのは、ハイバックタイプのシート。今回、南長野運動公園総合球技場のために新たに開発したイスです。
従来製品より約15センチほど背が高く、着席者はゆったりと上体を預けることができます。シートのカラーは、ブルーとホワイトの2色。2階スタンド席に「NAGANO」と文字を刻んでいます。

東西スタンドのコーナーのマルチボックス席には、座が開閉する肘掛け付きのツーピースタイプのイスが並びました。ボックス席は、グループ観戦にも適しています。さらに、このマルチボックス席の下のスペースは、テラスデッキ席。イスの設置は無く、最大4人まで入ることができる1テラス単位で販売されています。

VIP席は、赤い色が鮮やかな、ツーピースのシートが並んでいます。シャープでスタイリッシュなデザインながら、座り心地は厚みのあるスタンド席にも劣りません。カップホルダーは、肘掛けに備えつけました。

02チームカラーの青で統一! 観覧席からピッチまでが近く迫力満点

市立吹田サッカースタジアム

市立吹田サッカースタジアム
市立吹田サッカースタジアム
市立吹田サッカースタジアム
市立吹田サッカースタジアム
市立吹田サッカースタジアム

長年ガンバ大阪がホームスタジアムとして使用してきた万博記念競技場は、老築化が進み、またFIFAの定める国際規格も満たしていませんでした。そこで決まったのが、新たなサッカースタジアムの建設です。ガンバ大阪を愛する個人のファン・サポーターや地元企業を中心とする法人による「大阪にサッカー専用スタジアムをつくりたい!」という強い思いから、総事業費140億円の寄付金が集まりました。日本初の「寄付金で生まれた」市立吹田サッカースタジアムは、徹底的に観客・サポーターの立場で設計が行われています。

観覧席は、ガンバ大阪のチームカラーをイメージした青で統一されました。全体を見渡すと、各層に波が広がっていくようにも見えます。客席として採用された「BLM-8000シリーズ」は、世界標準の競技場観覧席の創造を目的に新規開発された、ツーピースタイプのブローモールディングシートです。従来と変わらぬ耐久性・保温性・クッション性を備えたまま、シャープなデザインを追求しました。座起立時の奥行わずか250mmまでのスリム化を図ることによって、通路幅を広く確保し、ストレスのない立ち座りと通り抜けを実現しています。

車イス席を含めた全席にカップホルダーが設置され、また全てのスタンド席に屋根が設けられたことで、観覧席の居心地が大きく高まりました。
2層目のVIP席は肘当て付き。一般席のカップホルダーは背に、VIP席は肘当てに設置されています。更にワンランク上のVVIP席。観客席ではなく、ラウンジでくつろぎながら観戦や交流も可能です。

観戦環境の快適さはもちろん、市立吹田サッカースタジアムの魅力として欠かすことができないポイントは、観覧席からピッチまでの近さです。客席最前列までの距離は、タッチラインより7m、ゴールラインより10m、 ピッチまでの高低差はなんと1.5m。選手と同じ目線になることで、一体感と臨場感を最大限に楽しめる設計が施されています。

03勾配やピッチの距離で「見るスポーツ」を創出するスタジアムへ

北九州スタジアム
「ミクニワールドスタジアム北九州」

北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」
北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」
北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」
北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」
北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」

2017年2月、北九州市民待望の球技専用スタジアムである北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」がオープンしました。

J3のギラヴァンツ北九州がホームスタジアムとして活用していた北九州市立本城陸上競技場は、J1のスタジアム基準の収容人数に満たないことや、アクセスの問題、陸上競技用のトラックがグラウンドを囲んでおり、スポーツを見るための施設としては不足があることなど、ファンから多くの声が寄せられていました。そこで建設が決まったのが、北九州スタジアムです。北九州最大のターミナル駅であるJR小倉駅から徒歩7分という好立地のため、気軽に足を運ぶことができます。

メインスタンド1階の中央エリアは、背もたれと座が分かれたセパレートタイプです。着座姿勢をしっかりと支える大きな背もたれと座によって、ゆったりと観戦することができます。その左右のエリアとバックスタンドは、背もたれのないタイプです。1席ずつ分かれ、お尻の形状にフィットする3次元局面の形状により、しっかりと身体を受け止めます。メインスタンド2階と南北のサイドスタンドは、シンプルなベンチタイプ。1席ずつ分かれているため、しっかりと自分のスペースを確保することができます。頭上には屋根が設置されており、バックスタンドを除くほぼ全ての席で、雨天や夏の陽射しが強い時でも快適に観戦を楽しめるつくりです。

VIP席は、メインスタンドのイスよりもひと回り大きな背もたれに分厚いクッションを設け、安心感のある豊かな座り心地を実現しました。肘掛けは便利なカップホルダー付きです。VIP席エリアの両側には、スカイシートとビジネスシートがあります。茶色いブロー成型品に黒いクッションの組合せは、柔らかい印象をつくりだします。VIP席とスカイシートとビジネスシート、それぞれ客席の後ろには、商談や飲食、寛ぎに使うことができるラウンジも設けられました。

観客席の勾配は、最大傾斜37度。国内最大級のこの傾斜により、前席との高低差が大きく、後方の席からでもピッチが見やすいつくりです。また、観客席とピッチの距離が近く、観客席の最前列はピッチ面とほぼ同じ高さで観戦できる「ゼロタッチ」スタンドを採用。最前列からタッチライン・ゴールラインまではわずか8メートルという圧倒的な近さになっており、「見るスポーツ」を創出する施設として、さまざまな趣向が凝らされています。

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

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