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産官学連携から地域貢献へと繋げる青山学院記念館 サンロッカーズ渋谷のホームアリーナ化から見えてきたもの

インタビュー / 2018.12.6

青山学院大学の体育館である青山学院記念館は、2016年より、バスケットボールチーム「サンロッカーズ渋谷」のホームアリーナとして活用されています。大学の体育館が、プロスポーツのホームアリーナとして貸し出されることは、国内初の出来事でした。変革の時期にある日本の大学スポーツの在り方に大きな影響を与えるものとして、大きな注目が集まりました。

©SUNROCKERS SHIBUYA

日本の大学スポーツは、箱根駅伝など人気を集める種目は一握り。「学生の自主的な課外活動」という域に留まっていますが、アメリカでは、大学スポーツを健全化することを目的とした全米大学運動協会(略称NCAA)が20世紀初頭に設立されました。今やアメリカの大学約1200校が加盟しており、放映権料を中心に年間で1000億円の収益を上げる程の大流行を果たしています。

アメリカに倣って大学スポーツを盛り上げるべく、日本でも新組織「UNIVAS(ユニバス)」の立ち上げ計画が始まり、大学スポーツを通じたスポーツへの振興、地域社会貢献などへの取り組みも活発化してきました。

今回は、青山学院大学 学生生活部 スポーツ支援課の海野大輔氏・久保田真里奈氏にインタビューを行い、プロスポーツのホームアリーナという役割を担いながらの大学運営や、これからの大学スポーツの発展に欠かすことができない産官学連携、地域貢献などのお話を伺いました。

青山学院大学 学生生活部
スポーツ支援課 課長/スポーツアドミニストレーター 海野大輔氏
スポーツ支援課 久保田真里奈氏

青山学院記念館が、サンロッカーズ渋谷のホームアリーナになるまで

――青山学院記念館が、サンロッカーズ渋谷のホームアリーナとして使用されるようになってから、丸2年が経ちました。どのようなきっかけで、貸し出しに至ったのでしょうか?

海野
サンロッカーズ渋谷が「渋谷区の中にホームアリーナをつくりたい」と渋谷区に相談をしたのは、2016年秋のことでした。B1リーグの条件である5000席以上の観覧席に合うアリーナとしては、渋谷区内では国立代々木競技場第二体育館などが該当しますが、オリンピックを控え長期改修の予定があり、稼働率の点でも難しかった。そこで候補に挙がったのが、本学の青山学院記念館だったのです。
私が所属するスポーツ支援課が立ち上がったのも、同時期でした。大学としては、スポーツに力を入れていこう、そのための部署をつくろうという話が、かなり前から上がっていたのです。東京オリンピック・パラリンピックも控え、スポーツ支援課を設立。同じ頃にプロスポーツのホームアリーナ化について打診があったのは、まるで狙ったかのようなタイミングですよね。

――プロスポーツのチームから、ホームアリーナとして使いたいという話は、これまでもあったのでしょうか?

海野
外部貸し出しは行っていましたが、こういった相談は初めてのことでした。大学としても、スポーツに力を入れたいという希望はありましたが、ホームアリーナになるなんてことは、考えたこともなかったと思います。キャンパスも手狭ですし、青山キャンパスには大学の体育館が一つしかなく、授業や部活動の利用で手一杯だったので。だから、最初に渋谷区を通してご相談をいただいた時は、正直びっくりしました。

©SUNROCKERS SHIBUYA

――実際にホームアリーナとして稼働するまでの道のりは、大変なものだったとお察しします。

海野
本当に大変でした。Bリーグ開催基準を満たすためには、税制や消防法上の問題だったり、外部の方が大学構内に入って来るという安全面の問題だったり、様々な検討事項が存在しましたので。事実、スポーツ支援課の立ち上げ早々、仕事が増えました。(笑)

――そのような課題を乗り越えても、ホームアリーナとして活用することを決めた背景には、何があったのでしょうか?

海野
バスケットボールというスポーツの発展に寄与したい、そして産官学連携による地域貢献を目指したいという思いですね。社会貢献は、大学の大きな使命の一つ。プロスポーツのホームアリーナになることは、スポーツの普及や、渋谷区の地域の活性化の協力ができるということですから、様々な課題をクリアして取り組む意義のあることだと判断しました。

――Bリーグを開催するまでに、具体的にどのような準備がありましたか?

海野
Bリーグの開幕時期は決まっていたので、まず、各設備は急いで整備しました。観覧席は二階の固定席しかなく席数が足りなかったので、フロアには移動観覧席を導入。空調設備を付け、トイレもリニューアルしました。
それから、大学としての管理体制も整えました。例えば、部活動のために体育館を利用していた学生との調整。Bリーグの試合が開催される週末は、代わりの活動場所を手配する必要も生じました。
久保田
学生たちも土日は1日中目一杯練習したいので、同じ敷地内にある中等部や高等部の体育館を借りたり、ここから徒歩15分ほどにある渋谷区のひがし健康プラザを使う案内をしたりして、「Bリーグがあるから活動ができない」ということにならないよう動いています。相模原キャンパスの体育館を利用することもありますね。ひがし健康プラザの使用料や、相模原キャンパスまでの交通費は、大学から支給して、学生の負担にならないよう注意しています。

プロスポーツと地域、両者との関わりが深まった約2年間

――ホームアリーナを担ってから約2年、何か変化を感じることはありますか?

久保田
青山学院記念館はアクセスが抜群に良いので、Bリーグにあまり興味がなかった人でもふらっと足を運びやすい、その結果、注目度も高まっているのではと感じています。
また、青山学院の学生には、優先的に観戦できる優待チケットを案内しているのですが、それをきっかけにバスケットボールを初めて観たという声もあります。若い世代の興味関心を惹くトリガーの一つになれていれば、嬉しいですね。
海野
サンロッカーズ渋谷・渋谷区・青山学院大学の三者では、定期的な連絡会を開いています。興行の安全や試合の集客状況など、様々な情報を共有しながら密な連携を取っており、いい形で回っていると思います。
海野
これまでも渋谷区とはいろいろと繋がりがありましたが、ホームアリーナを担い始めてから、関係性は深まったように感じています。渋谷区は、区内に拠点を置く企業と区が協働して地域の社会的課題を解決していくための制度「S-SAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー)協定」を2016年からスタートしていますが、初めて教育機関と締結した先が、青山学院大学です。
また、先月からは、渋谷区在住または在学の小中学生を対象に、「青トレ」というスポーツ教室を始めました。相模原のキャンパスでは、相模原市と協定を結んで、野球・バスケットボール・テニスなどのクラスを以前から実施していたのですが、こちらではやったことがなかったんです。これも、ホームアリーナを足掛かりに区と密な関係を築けるようになったからこその開催と言えると思います。青山学院記念館が空いている、日曜日の朝7時半から9時まで。大学は開かれた場所だと言いますが、普段はなかなか入りづらいといいますし、地域住民にとっても身近に感じていただけるきっかけになればいいなと思います。

――プロスポーツチームとも地域とも良い関係性が築けている、産官学連携の先進的なモデルと言えそうですね。

海野
他の大学から、同じようにプロスポーツと連携したいという相談や、どのように運営しているのか体制を参考にしたいという連絡をいただくことも増えました。
久保田
イベント会社からの問い合わせも増加しています。コンサートやライブをやりたいという問い合わせが多く、話の切り口は「サンロッカーズ渋谷のホームアリーナとして貸し出されていることを知って連絡しました」が定番ですね。

移動観覧席の導入によって広がった、イベントへの対応力

海野
ホームアリーナになるタイミングで、移動観覧席が導入されたので、催し物の幅も広がったのだと思います。相模原キャンパスの体育館にも移動観覧席がありますが、あれは壁に据え付けられたタイプですね。こちらは、移動観覧席本体を移動させて好きな場所に観覧席を設営できるのがいいですね。
イベントに応じて、お客様が集中できるポジションへ自由に移動観覧席を配置できるから、視線が散漫になることがない。座り心地の評判も良いです。今年は、バスケットボールの男子日本代表国際強化試合や、大相撲渋谷青山学院場所の夏巡業もありました。11月にはTリーグも開催されます。体育館全面を使わずに、コートと観覧席を寄せて設置し、コンパクトな会場に仕上げる予定です。

――Bリーグの試合だけでなく、様々なイベントの計画があるのですね。

海野
ただ、スポーツや地域貢献に関係がないイベントでの利用は、原則、お断りしています。どんなイベントも受け入れてしまうと、スポーツの普及や、渋谷区の地域の活性化に貢献したいという、大学が目指す姿からもブレが生じてしまうので。また、学生のための施設ですから、学生が使える時間もきちんと確保することが大切だと考えています。

これからの青山学院記念館

――青山学院記念館の今後の展望や目標があれば、お聞かせください。

久保田
スポーツが好きな学生にも、スポーツをしない学生にも、地域の方にも、スポーツをもっともっと身近に感じてもらえるような環境をつくっていきたいですね。渋谷区という地域の利便性を生かしたいです、スポーツが大学を通じて街の中に溶け込んでいくような、そんなモデルケースになれればと思います。サンロッカーズ渋谷のホームアリーナになったことがきっかけで、スポーツ支援課も活動の幅が広がったように感じています。この流れを、継続していきたいですね。
海野
サンロッカーズ渋谷との連携は、互いに初めてのことが多く、1年目は不安材料が多かったのですが、年月を経てうまく循環するようになってきたと感じています。ホームアリーナを担うことは、学生に不便をかける点もありましたが、空調設備が付くなど施設が整備されたことは、学生たちにとって大きなプラスになりました。一方で、プロスポーツの試合は、言わずもがな、集客が大切。飲食などの出店や身障者向けのバリアフリー対応など、ホームアリーナとして整備すべきポイントは多く存在しています。たくさんの方に観戦を安全に安心して楽しんでいただくために、施設は進化し続けなければなりません。そしてその進化は学生の目に見える形で、これからも学生生活へ還元されなければならないのです。これらの両立が、今後の大きな課題になると感じています。

――ありがとうございました。

取材日:2018年10月31日

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