楽屋を訪ねてvol.02時間堂 大森晴香(プロデューサー)

2016.08.02
インタビュー

劇場・ホールで活動するアーティストや団体を訪ねて、客席のイスをはじめとした劇場についてインタビューを行う『楽屋を訪ねて』の第2弾。
2016年7月、東京芸術劇場 ウエスト・シアターで上演された『ゾーヤ・ペーリツのアパート』を観劇しました。本作は、ロシアの国民的作家であるミハイル・ブルガーコフ著。198回も上演されるほどの爆発的な人気を誇りながら、たった3年で発禁になったブルガーコフの問題作。日本初演となるこの作品を上演したのが、東京芸術劇場に初新出となる劇団・時間堂です。時間堂のプロデューサーである大森晴香氏に、「プロデューサー」の仕事と東京芸術劇場公演について伺いました。

時間堂 大森晴香(プロデューサー)

大森晴香(おおもりはるか)
時間堂プロデューサー兼合同会社時間堂代表社員。
専門学校で舞台俳優の勉強をしたのち、応用演劇への関心から大学へ進学、学業の傍ら当日運営として活動。卒業後は人事系経営コンサルティング会社の営業職を4年弱経験。退職後はフリーの制作として活動。2012年2月、時間堂に専属プロデューサーとして加入。2012年に全国ツアー、2013年に海外小説の舞台化、2014年に専有スタジオの開設と劇団法人化を実現。現在に至る。

大森さんは、時間堂の「プロデューサー」。まずお仕事内容について教えていただけますか?

時間堂には2012年から参加を始めて、今年で5年目になります。作品に関わる部分の最終決定は、演出家の仕事。私は、主にクリエーション以外の統括を担当しています。いわゆる制作スタッフのチーフですね。公演を行う会場探しや広報活動などの事前準備から、公演当日のお客様のご案内など、仕事内容は多岐に渡ります。

上演する劇場は、いつ頃決まるのでしょうか?

劇場を予約するのは、1年程前からです。公立の劇場では、2年前から申し込むことも珍しくありません。作品のイメージに合う場所を選びたいなと思うので、上演する作品が決まった後、上演劇場となる劇場を決めることが多いです。

劇場探しのポイントはありますか?

時間堂の公演では、ステージのまわり3面から4面を囲むように客席を設置することが多いため、レイアウトの自由度が高い会場であることが大きなポイントになります。あとは天井の高さですね。高さによって空間の奥行きが随分変わるので、演出の幅も広がります。

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今回『ゾーヤ・ペーリツのアパート』を上演した東京芸術劇場は、初めてのご利用だそうですね。

ずっと東京芸術劇場で公演をしたいと思っていました! 実は、申請の時点で既に2回落ちた経験があるんです。だからこそ、今回の上演には特別な喜びを感じています。

それはおめでとうございます! 東京芸術劇場での公演を熱望していた理由とは?

最近、上演する劇場の「格」って大切だな、と思うことが多いです。私が観客として観に行く時もそうなんですけど、「この劇場で上演されているものは面白い作品だ」っていう安心感みたいなものがあるんですよね。劇場自体にファンがいる感じ。東京芸術劇場も、そういう劇場です。ここで公演を打つことは、憧れであり、大きなステップアップだったんです。

実際に利用してみて、いかがですか?

公演の運営に関する知識の豊富なスタッフさんが多く、とてもありがたいです。小劇場規模の公演に精通していらっしゃる方ばかりで、制作面でたくさんのアドバイスをいただきました。客席や舞台の設備はもちろん、ロビーやトレイも広くて使いやすいし、とても素敵な劇場です。

憧れの劇場で公演を打つことで、これまでの公演と変わったことは?

出演俳優の数も舞台セットも多いですし、上演時間も90分公演から休憩込み2時間45分に。そして当日券料金も5000円と、今までに比べて高い金額に設定してみました! こんなことができる背景としても、劇場の「格」は大きいですね。

2時間45分の上演を決めた背景として、客席のイスも関わりがありますか?

シアターウエストのイスは、背もたれどころか肘掛もついた、クッションも豪華なイス。パイプイスやベンチタイプのイスだと、どうしても90分の上演時間が限界なんですよね。良い劇場で上演することで、作品の幅も広がるし、お客様も快適だし、嬉しいこと尽くしだと改めて感じています。

シアターウエストのイスについて、何かお気づきの点があれば教えてください。

座り心地も良くて、どこの小劇場もこのくらいのイスがあれば本当に素敵だと思います。これと同タイプの劇場イスが、EX THEATER ROPPONGI(以下、EXシアター)にもありますよね。今回の公演以前に、スタッフとしてEXシアターに行ったことがあるんです。会場レイアウトを変える必要があってイスを何度か動かしましたが、正直な感想として、少し重いかなと感じました。
でも私は、この重量が大切だとも思うんですよね。もちろん、時間堂のように演出の都合で客席を一からつくるような団体としては、「もう少し軽い方が設営が楽なのに」と思うこともありますよ。ただ、軽いイスだと、お客さんが座っている時に簡単に動いてしまう。そんな客席では大変です。座り心地を求めると、必然的にイスのサイズは大きくなりますし、クッションや背もたれの高さ、肘掛けなど、求めるものが増えて重さが増えるのも当たり前。やっぱり、お客さまが快適に過ごせるイスであることが1番大切ですから。

電動で展開・収納の操作ができる「移動観覧席」が導入された劇場も増えてきています。

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EX THEATER ROPPONGI

EX THEATER ROPPONGI
前方のスタッキングチェア+後方の移動観覧席

EX THEATER ROPPONGI

1階の客席を全て収納し、スタンディングの音楽ライブにも対応。スタッキングチェアのみで自由なレイアウトづくりも。

EXシアターの1階席後方部分にも、この移動観覧席が設置されているんですよ。

そうなんですか! 私が動かしたイスは、移動観覧席の前に並べるスタッキングチェアだったんですね。電動で動くのは便利ですね。以前、福岡の劇場で見たことがあります。設営が楽なのはもちろんですし、段状になって客席に高低がある点も嬉しいなと思います。客席のレイアウトの自由度が高く、手軽さとも相まって、お客さまにも優しい座り心地。小劇場にも増えるといいですね。

取材日:2016年7月
取材:企画広報部 M.N

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