コトブキシーティング株式会社

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市民が愛する米子市公会堂リニューアルオープン記念コンサート「祝宴」開催!

レポート / 2014.9.22

2014年3月、耐震補強・大規模改修工事を終え、市民が待ちに待った米子市公会堂がリニューアルオープンし、5月18日のこけら落とし公演を皮切りに、大ホールの利用も始まりました。特徴的な外観はそのままに、屋根は軽量化、音響・空調設備を充実させて3年半ぶりに蘇りました。市民のこの建築に対する熱意が、創建当時の状態を存続する後押しとなりました。なんと約5万人もの署名が集まったそうです。

米子市公会堂外観

米子市公会堂は、市制30周年の祈念事業として、1958年に山陰随一の文化の殿堂として建設されました。設計は、日本を代表する建築家故村野藤吾氏(1891-1984)。公会堂の建設は、戦前からの市民の強い要望から生まれました。当時、「一世帯が毎日一円をためて公会堂を!」という市民運動が起こり、3000万円もの寄付金が集まったそうです! 村野藤吾氏は、その様な市民の熱い思いに感動され、設計料を返上、そして寄付。その後、1980年に村野氏も携わって大改修が行なわれ、大ホールは音響的にもデザイン的にもさらにブラッシュアップされました。音の響きが素晴らしいと国内外の音楽家から高い評価を得ながら、市民にとってもより掛け替えのない施設となっていったのです。

図面を見る村野藤吾氏と 覗きこむ野坂市長

図面を見る村野藤吾氏と覗きこむ野坂市長

油土による模型 壁面、屋根の局面は未だみられない

油土による模型
壁面、屋根の局面は未だ見られない

完成当時のホワイエ

完成当時のホワイエ


公共建築百選にも選定された米子市公会堂
ロシア構成主義の要素を取り入れた壁や柱

建築としての最大の特徴は、何と言ってもデザインです。平成10年に建設省の「公共建築百選」にも選定されています。
外観は「グランドピアノとブラジルの教会」がモチーフ。村野氏は、公会堂の設計前年に南米を旅行し、イメージを固めたそうです。
前庭の方へ大きく張り出したエントランスキャノピーは、そのままホワイエの天井へと繋がっていますが、実は、これはホールの2階席の床。つまり、内包したホールの2階客席の床が、そのまま外観に張出したという感じです。ロシア構成主義の要素を取り入れた壁や柱の構造の大胆な組み合わせは、ダイナミックさを感じますね。

独創的で繊細かつ華麗な装飾性のあるディテール

そして、独創的で繊細かつ華麗な装飾性のあるディテールが美しい! ついつい近寄りシャッターを切ってしまいます。
1958年とは思えないモダンな扉の引き手や手摺、照明! このような装飾品のパーツは、できる限り既存品を綺麗にして、そのまま再利用されているそうです。ダイナミックで堂々とした存在感の中にある繊細さ、優しい曲線、遊び心が訪れる人々を和ませ、安らげる空間になっているように感じました。

米子市公会堂 ホール内

内装は、ほぼ既存と変わらない形で綺麗になり、客席も従来の1,120席のまま、装いが新しくなりました。イスは、リニューアル前より広い間口と立ち座りのし易い座面で座り心地が良くなり、木調で高級感を演出しています。

肘が開閉する車椅子用の席

米子市公会堂 改修前のイス

改修前の客席の様子

イスの張地は、音響にも影響がないよう配慮しながら、既存のイメージを踏襲した黄金色のモケットを再現しました。モケットには、他の張地に比べて、音を吸収する特徴を持っています。そしてもうひとつの大きな特徴は、多くの人が座ることによって、目に見える張地の色が変化することです。
納入時の新しい状態の張地の色は何だか濃く見えますが、これは、私たちが糸の断面を見ているため。人が座ると、背中や座部分のパイル生地が押されて、この糸が倒れます。糸が倒れることによって、最初は糸の断面が見えていましたが、だんだんと側面が見えてくるようになり、やがて経年変化で、少し白っぽく見えてくるのです。モケットは、バスや電車でも使用されていることから分かるように、非常に耐久性に優れています。米子市公会堂も、1980年の改修から約30年間も利用され続けました。
ホワイエの一角には、今も改修前のイスが大切に展示されています。他にもマイク、外観に使用されていたタイルや、青焼きの図面など創建当時を偲ぶ品や写真などが公開されていました。

オープニングコンサート「祝宴」 当日の会場前の様子

第56回米子市音楽祭 オープニングコンサート「祝宴」会場の様子今回、村野藤吾氏の建築を訪れることだけでも楽しみだったのですが、記念すべきこけら落とし公演にもお邪魔させていただけるとことになり、さらにテンションが上がってしまいました!
こけら落とし公演は、今年で第56回となる米子市音楽祭のオープニングコンサート「祝宴」。この米子市音楽祭は、「市民の手による音楽祭を」の声により始まり、今では米子の初夏を告げる行事として定着しているそうです。
開場前から前庭では、地元の中学生によるブラスバンドの演奏で盛り上がり、リニューアルした公会堂に脚を踏み入れる時間を、今か今かと待つ人で大賑わい! チケットはあっという間に完売し、当日券もない程の盛況ぶりでした。

コンサートは三部構成。第一部では、今回のオープニングコンサートの為に結成した、中学生から大人まで老若男女で構成された混声合唱団(米子市音楽祭合唱団)の心温まる歌。第二部は、地元出身の音楽家の方々が、美しいオペラとピアノ演奏。そして、第三部には米子管弦楽団が加わって、ホールいっぱいに華やかなお祝いのハーモニーが響き渡り、まさに「祝宴」!
出演者のソプラノ歌手徳山菜奈さんは、同出演者テノール歌手の山本耕平さんの影響を受けて、音楽の道に進んだそうです。今回のプロの音楽家と中高校生たちの交流も、また新たな音楽家を生み出すきっかけにもなるかもしれませんね。

オープニングコンサート「祝宴」の様子

米子市公会堂は、市民の情熱によって、解体することなくリニューアルすることができました。これは、本当に素晴らしいことだと思います。そんな米子市に、少しばかりですが、貢献できたのかな? と思うと、嬉しくなりました。市民の皆様がこけら公演を楽しんでいる姿を拝見して、その想いをますます強く感じました。
音楽を愛する米子市。創建当時から市民や地域の皆様にとって、唯一無二の存在である米子市公会堂は、建築としての価値と共に、音楽や文化を大切にする心や情熱も、次世代へと引き継がれていくことでしょう。

夜の米子市公会堂

工事名称
米子市公会堂耐震補強及び大規模改修工事
設計
日建設計・桑本総合設計特定設計業務共同企業体

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