コトブキシーティング株式会社

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21世紀型の教育を模索する/建学の精神を実践する新校舎

インタビュー / 2014.12.18

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校の校長・田村哲夫氏、副校長・田村 聡明氏渋谷教育学園幕張中学校・高等学校は、2013年、開校30周年を迎えました。同校の教育目標は「自調自考の力を伸ばす」こと。「自らの手で調べ、自らの頭で考える」何事にも諦めることなく、積極的に取り組むことのできる人間の育成を目指す進学校です。学校法人渋谷教育学園の理事長でもある田村哲夫校長、そして田村聡明副校長にお話をいただきました。

学校法人渋谷教育学園 理事長
渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 校長 田村哲夫 氏

学校づくりの背景― 「教育」から「啓発」へ

21世紀に活躍できる人材を育てたい、という思いで学校の仕組みを考え、この学校を作ったのは今からちょうど30年前の1983年です。当時は依然、明治時代以降の近代化路線の延長で、欧米諸国に“追いつけ追い越せ”の目標の中で学校教育が作られ、世界に冠たる成果を上げてきました。

寺子屋の伝統があった日本の教育が、明治時代に切り替えられたのは大きな変化です。江戸時代までは、「教育」ではなく「啓発」でした。いつけ追い越せ”の目標の中で学校教育が作られ、世界に冠たる「啓発」は「憤せざれば啓せず。せざれば発せず。」という孔子の『論語』の述而篇の中の言葉が由来です。学習者である子どもの意識を前提として、学びたいというタイミングを見て教える、という事ですね。その意味は、「ラーニング」です。

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校一方、「教育」は教え育てるという事ですから、学習者が思っている事とは残念ながら必ずしも関係ありません。決まっている目的へ到達させる事が主たる意味であり、それは「レッスン」です。

例えると、「教育」が定期航路、「啓発」はコロンブスの旅行のようなものです。答えがある道を進む事と、答えのない世界を考え進む事の違いで、明治以降は教育一辺倒傾向が強かったという事ですね。

教育の変革―世界と日本

80年代に入り、今までの日本の教育では21世紀に活躍できる人材は育てられないのでは、「教育」から「学習」に重点を移そうという風潮が、日本国内に大きく沸き上がりました。そして、1984年には臨時教育審議会が立ち上がり、学校の自由化、個性尊重、生涯学習等々の言葉が3年の月日をかけて初めて学校制度の中に導入されました。それを目標にして教育改革に乗り出すのですが、なかなか進まない。学習指導要領で示されたものを生徒に教える公立の場合には難しいのです。

臨時教育審議会の発足には、人間の活動は地球規模を超え出し、資源が有限である事を前提として、このまま人間が何も制約もなしに精一杯活動していいのか?という世界的な動きが背景にありました。それを受け、ユネスコでも21世紀に向けての教育指針として、「Four Pillars of Education」(学習の4本柱)が報告されました。「Learning to know」「Learning to do」「Learning to live together」「Learning to be」の4つです。

21世紀を生きるための3つの教育目標

私はこの4本の柱の中で、21世紀へ向けてのあるべき教育の姿として最も重要なものは、「Learning to be」という提言に入っていると受け止めました。それを分かりやすい日本語に言い換えた言葉が、教育目標の1つ目、「自調自考」です。自ら考え、実行する。レッスンではなく、ラーニングを意図しています。2つ目が「高い倫理観」、3つ目が「国際人の資質」です。これらは21世紀というキーワードと繋がっています。人類社会が国際社会になって行くと考えての目標です。国際社会では多様な価値観、生き方、言語、考え方の人々が混在しています。その人達と共同で仕事をするためにはお互いの信頼が必要です。人が人を信頼する基本が「高い倫理観」です。嘘をつかない、人は騙さない、額に汗して働く事は大切である等、単純なものでもあります。これらをしっかり身につけている人はどんな所へ行っても信用されます。これを中高時代に身につけろと。

3つ目の「国際人の資質」は、国際社会の多様性、つまりダイバーシティの意識で対話性を重要視するという事です。実は「国際人」の言葉は英語にないのですが、日本人は「国際人」という自覚を持つ必要があります。地理的に世界の端にいる私たちは、自分たちと違う考えの世界がある事を理解していないと、自分の考えが一番正しく、他の人もそう思っていると誤解して生きる危険があるのですね。国際人の資質はこれからの世界を生きる日本人にはとても大切です。

「幕張中高」と「渋谷中高」の違い

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 昇降口へ渋谷中高は1997年に設立しました。幕張中高設立の14年後です。女子校だったものを共学校に改組したのですが、同じような教育目標で都市型の学校を渋谷に作ったわけですね。郊外型と都市型の違いはあります。人が育つには環境の影響はとても大きいですから、環境が明らかに違う事を意識した学校作りをしないとうまく行かないですね。先生方の考え方も少し変える必要があるだろうと思っています。

郊外型の幕張は門があり、門の中に「学校」という特殊な雰囲気ができます。生徒は門を入り、校樹の槐(エンジュ)という街路樹を通って来る間に、「ああ、ここから学校だ」と思うようになるのです。チェンジングマインドですね。そして、この学校の正面の一番いい場所を昇降口にし、階段を上がって入るようにしています。

校舎を作る際、多くの方に「田舎だからドロドロになる、やめた方がいい」と言われました。そんな事はないと思い進めましたが、実際、今まで生徒は全く汚しませんね。逆に目立つ場所だから、気の使い方も変わってくる、養われてくるのだと思います。このような気の使い方が郊外型では必要なのです。

ところが都会型の渋谷には門はありません。しかも、上履きに履き替えませんから、街を歩いてそのまま学校へサッと入って来ます。これも一つの形ですね。日常的な活動をそのまま学校に持ち込む前提で学校作りをしています。

中高一貫教育の魅力

図書室幕張も渋谷も開校以来、1割程度の帰国子女が入学しています。その影響もあり、進路に国内の大学を選ぶ生徒がほとんどですが、1割程度が外国の大学を選び進学するようになりました。帰国子女ではなくても、中高の6年間で海外の大学に行けるほどの学力をつけられるという環境があります。もちろん、生半可な努力ではできませんが。

入学当初、日本語より英語の方がうまい同級生に接し、「こんなに英語をしゃべれるやつがいるんだ」とびっくりするらしいのです。それで、同じぐらいになろうと思って英語を学ぶと、6年間頑張れば追いつくのですね。これは中高一貫教育でないと難しいと思います。このような目標を抱くことも「ラーニング」のひとつ。21世紀の選択肢は常にグローバルな環境にあるのです。多様な子供を受け入れ、多様に育てる、これが目標です。

学校法人渋谷教育学園
渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 副校長 田村聡明 氏

先を見据えた施設作り

この新校舎のコンセプトの一つが、生徒の活動場所をきちんと確保しようというものでした。30年経ち生徒数も増え、スペースが足りなくなってきていましたので、これから先の30年についても、色々な興味関心に従って対応できる施設をと考えました。結果として、図書館の上に階層を上げ、施設の容積を増やし、グラウンド等の活動場所を減らさない形で整備計画を進めました。6階建てのため、中学棟・高校棟と3階で動線を接続させ、動きやすい形で全体的な整備ができたと思っています。

新校舎の最上階に、第2啓発室があり、ここで校長講話を行います。学年集会も開きますし、中央のブロックの座席を収納して、ダンスのクラブ活動でも使ってます。講堂は大きすぎるので、ここの席数が学年集会にちょうどいいですね。また、スペースの制約や今後の対応から、ある程度多目的に使えるようにしておきたいという意向もありましたね。

多様なスペースでチェンジグマインド

「ティーチング」と「ラーニング」では、その学習の違いを意識して環境作りをする事がとても大切ですね。そのために色々な部屋を設けました。少人数対応の教室、多目的に使える教室、iPadに対応した新しい形のIT教育を目指した教室、音楽フロアの少し小分けにして個別に練習ができる部屋等ですね。教室以外では、自習室も多く、生徒が時間を決めて自由に使いなさいと。夏休みも使えます。図書館も朝から夜遅くまで使えます。食堂もオープンですから、放課後にグループ学習等をしています。一方で、生徒が休んだり集えるような場所も生み出し、ゆったり使えるようにしたいと考えました。

グローバルという視点の中で、これからどんな時代が来ても、フレキシブルに対応できるような生徒を育てたい。ですから、もう一つのコンセプトは「チェンジングマインド」です。そこへ行くとちょっと気持ちが変わる、というような事を考えて作ったつもりです。本学の建学の精神である「自調自考」が実践できる、自分たちでしっかり気持ちを切り替えて使えるような校舎になってもらえればと思っています。

取材:2013年10月
このインタビューは、納入事例集「View No.07 (2014 JAN.)」に掲載されました。


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