子供たちの夢と希望を育む復興のシンボル

2014.07.25
インタビュー

東北の活力を創造する、屋内スポーツの聖地を目指す「ゼビオアリーナ仙台」。プレーヤーと一体になれるエキサイティングな空間を演出するこのゼビオアリーナ仙台の並木浩司館長に、アリーナ誕生までの奇跡と施設の魅力について、お話いただきました。

ゼビオアリーナ仙台 館長 並木 浩司氏

ゼビオアリーナ仙台 館長 並木浩司氏

「体育館」にはない「多目的アリーナ」特有の空間性

私たちは、このアリーナに来ていただくお客様に、従来の体育館では味わえない「エンターテインメントの中にある華々しさ」を味わっていただきたいと考えています。アリーナと体育館の最大の違いは、そういったエンターテインメントを観に来ていただける感覚ではないかと思うのです。公共の施設の多くには、どうしてもこれはできないということがたくさんありました。しかしここは民間施設ですから、汚したら掃除をすればいい、ジュースをこぼしたなら拭けばいいという感覚で運営しています。これは究極論になるかもしれませんが、「綺麗な施設ができました。申し訳ないけれども汚しては困りますので、皆さん土足禁止で靴を脱いでください」では利用する方も嫌になってしまいますよね。土足も関係なく来て、飲んで食べて、ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てていただければ十分です。規制に縛られることなく、まずは雰囲気とスポーツを楽しんでいただくことを最優先にしたいと考えています。
一方で、屋内スポーツは冬に行われることが多いため、アリーナの使用をスポーツだけにこだわっていると、夏には何も行わない状態になってしまいます。このような期間には、スポーツ以外のコンテンツのひとつとして、音楽イベントも開催していきたいと思っています。そして空いている平日などはコンベンションに活用していただければ。そうして稼働率を上げていくことは、今後の大きな課題ですね。

復興シンボルとして誕生したゼビオアリーナ

コンサートイメージ

参考イメージ

ゼビオが初めて大型店舗を展開した場所が仙台市でした。アメリカで展開されている多くの大型店舗を視察し、「日本でもやってみよう」という思いから始めたのです。もともと福島県郡山市に本社を持つ会社ですから、人口やマーケットから検討して、仙台市に大型の店舗を出店させていただきました。今回のアリーナ建設に際して、また何か新しいことを始めようというスタート地点に立った時、大型店舗を出店させていただいた時同様、仙台市を選ばせていただきました。これは地元行政の協力もあったからこそです。
しかし、このアリーナの建設計画の進行中、震災が起きました。大変な状況下でこの計画を進めてはいけないのではないかという思いもあり、私たちとしても非常に悩みました。それでもこの場所で実行したのは、このアリーナが仙台市の中で復興のシンボルになれるのではないか考えたからです。私も福島県で震災を受けて大変な思いをしましたが、実際にはもっともっと苦労されている方がたくさんいらっしゃいます。そんな方々にスポーツを見ていただいたりコンサートを楽しんでいただいたりすることによって、ゼビオアリーナ仙台が復興の元気の源になれるのではないかと願っています。

コミュニケーションから探る地域貢献の在り方

アリーナに来場してくださるお客さまが、町の商店街まで足を運んでくだされば、それは地域の活性化に繋がるでしょう。でもそれが押し付けの地域貢献になってはいけません。望まれたものに対して私たちがどれだけできるか、一緒になってどれだけできるかということが大切だからです。 皆さんに何を期待されているかを知るためには、その場所に住んで、地元の方々の話を聞くことが一番大事だと思います。私は今、アリーナのある“長町”に住んでいます。自転車で通勤する時に「おはよう」と声をかけていただけるような関係になると、色々な意見を寄せていただける気がしますね。実際にオープン前からお話のあった地元の太白区民の方の綱引き大会をアリーナで行いました。リボンビジョンを使ってフルマックスの演出をするなど、他にはない素晴らしい大会になりましたよ。子供たちが喜んでくれたのも印象敵的でしたね。

太白区綱引き大会

熱戦で盛り上がる太白区綱引き大会の様子

「屋内スポーツの聖地」を目指して

コンサートイメージ

bjリーグ仙台89ERSホームゲームの様子

私たちの目標は、たくさんのコンテンツを見ていただける場所を、子供たちに提供すること。たとえばアイスホッケー、バスケットボール、バレーボール、いろんなものを見たけれど、僕の中ではやっぱりフットサルが良かったよとか、バスケットボールが良かったよとか、子供たちの将来の選択肢を広げる手伝いができるような施設を目指したいと思っています。 もうひとつは、スポーツの全国大会。多くの方々が復興のためにと仙台や東北に足を運んでくださっていますが、スポーツの全国大会はまだ開催されていません。私たちのアリーナが “長町”にあって、南には仙台市体育館が、北側には青葉体育館があります。1施設では実現しにくいことでしたが、この3つの施設が連携すれば、全国大会の誘致も夢ではないと考えています。これが実現できれば、復興の経済効果としても必ずいいものができあがると思うのです。これが私たちの目指す「屋内スポーツの聖地」の姿です。
高校野球には甲子園、高校サッカーには国立競技場という聖地があるように、「屋内スポーツの聖地」をつくりたい。そしてこのような施設が全国各地にできて、子供たちの夢が広がるような環境づくりができたらいいなと思っています。

取材:2013年4月
このインタビューは「EXCITING arena vol.1」に掲載されました。

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