コトブキシーティング株式会社

ホール・劇場・学校・スタジアム・映画館など、公共施設のイスやカプセルベットの製造・販売

本を読む「空気をデザイン」する

インタビュー / 2012.12.7

金沢市としては4番目の図書館「金沢海みらい図書館」が、2011年5月にオープンしました。約60,000個の丸窓が配置された壁面を持つ立方体の独創的なデザインの建物は、新たなランドマークになっています。教育・文化活動のために活用できる交流ホールや集会室などが併設され、オープン後1ヶ月で約9万人が入館し、新しいスポットとして賑わいをもたらしています。設計を行った、シーラカンス K&H の建築家、堀場氏にお話いただきました。

シーラカンス K&H 代表取締役 堀場 弘氏

本を読む「空気をデザイン」する

「金沢海みらい図書館」金沢で4番目の図書館ですが、プロポーザルの際に私たちが最も熟慮した事は、「これからの市民のための図書館をどういうものにすべきか?」ということでした。「リーディングスペース」のあり方を考え抜き、提案した形が、「本の多さと物理的な存在が実感できるワンルーム」のスペースで、この図書館の大きな特徴の一つとなっています。

図書館の持つ3つの機能、「保存」「管理・貸し出し」「閲覧」のうち、地域の公共図書館は従来の貸し出し型から滞在閲覧型に向かい、最近はこの、「本を読むスペース」がだんだんクローズアップされてきている時代です。一方で、現在、デジタルメディアとか映像メディア等の発達や本離れの傾向の中、本、或いは本の情報はどこでも借りられたり、どこでも読めるわけですから、公共図書館の価値・意味としては、本が沢山ある場所であることが感じられるようになっていないと意味がないのではないか、本がたくさんある場所、ということが大事だろうと思うのです。そのために、ワンルームにし、かつ天井が高い空間にしました。プロポーザルでは高さ15mの設計だったものが最終的には12mになりましたが、そこにある本の間で、実際に手にとって、本と出会えて、しかも自然光のやさしい光に包まれた中で気持ちよく本が読める、つまり“沢山の本の中で求める本と出合える空間”を作ろうと思ったのです。

図書館は、いろいろな人が集まって本を読むのですが、本を読む事自身は個人的な行為で、1人の世界ですよね。天井が低いと、お互いの関係や距離感が気になり、気持ちよくないと思うのです。たくさんの人が集まった中でそれぞれの活動をする時には、やはり空気の大きな気積が必要だと思います。気持ちよく本を読み、本に没入できる体験のための、この約20,000㎡という空間であり、本を読む空気をデザインしたいと考えたわけです。

この様な大空間への光の入れ方はデザインの主要なポイントで、外壁の細かい小さい穴は、それが単純なガラスで透過するのでも無く、且つ、壁に単純に穴があいている開口部という構成でも無く、その中間の半透明のイメージで光が全体として柔らかく入ってくる、というものです。この地域は降雪地帯ゆえに、トップライトでは屋根に積もった雪で光が採れなくなるため、大きな壁面を利用しました。「小さな穴のたくさん開いた外壁」は前例がありませんでしたから、造り方、適正な穴の大きさ・ピッチの検証にはかなりの時間をかけました。最終的には、1/10のモデル(4.5×4.5mの広さの部屋)を大工さんに現場に作ってもらい、実際に中に入って光の状態の確認して決めています。遮光装置を設置しないために、西日の強いところは、熱線吸収ガラスやセラミックプリントを採用し、部分的に対策しました。その結果、φ200、250、300の三種類の大きさの丸窓から入ってくる自然のやさしい光に溢れた居心地の良い空間が出来たと思います。

また、計画当初から交流部門の企画があり、250人のホールや集会室等の市民の交流スペースがあります。「交流ホール」は、ダンスやレクチャー等、多目的に使うことが想定されていましたので、移動観覧席の導入は早くからアイディアとしてありました。さらに、市民がフラッと立ち寄れるところにするために、ホールの壁をガラス張りにして室内の様子が分かる様にしています。空いている時にはここで本を読んだり、おしゃべりしたり、ただそこに座って休憩するだけでも良いと思うのです。利用しやすく、そこにホールがあることが誰にでも分かるようにすることで様々な使い方が出来ますし、利用したい人も出てくると思います。とにかく使われる事が大切なのです。建築には色を多様せず、そこに入っている人やモノが主役になる様に、そして光に敏感な建物という点からも、「白」を基調とした建物にしています。多くの市民に利用される、人が主役の図書館に育っていってくれると嬉しいですね。

Kanazawa Umimirai Library
This is the fourth public library in the city of Kanazawa. With a hall and meeting rooms, it also serves community hall-like functions and is used as local citizens' learning and exchange center.
Client : City of Kanazawa
Architect : Coelacanth K&H Architects Inc.

取材:2011年11月


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