被災した女川町に、町民待望の新庁舎が誕生
リアス式海岸の豊かな海と山々に囲まれた、宮城県女川町。全国でも有数のサンマの水揚げ基地としても知られるこの土地は、2011年3月11日の東日本大震災で津波によって大きな被害を受けました。女川町役場も全壊しましたが、2011年7月からは仮設庁舎で業務を再開。そして2018年10月、住民待望の新庁舎が開庁したのです。
新庁舎は、旧庁舎から約150メートル内陸に移動した、海抜20メートルの高台に建てられました。旧庁舎と同じく被災した、生涯学習センター・保健センター・子育て支援センターを併設した、複合型の庁舎です。
木をふんだんに使った、風格と温かみのある議場空間
これからの女川町のあり方が審議される議場は、役場の3階に設けられました。木質化を図り、風格を感じさせながらも温かみのある内装空間が創り上げられています。議席のレイアウトは、議長席と対面して議員席と傍聴席が並ぶ、基本型。傍聴席は1段高い位置に設けられており、議場全体をしっかりと見渡すことができます。
議場家具は、床固定式が選定されました。キャスターが付いた可動式のタイプよりも抜群の安定感があり、また座ったり立ったりする際に机やイスの位置が変わることもないので、常に整然とした美しい配列を保つことができます。イスの座は回転式ですが、着席者の起立・着席に合わせてイスが適切な位置まで自動で動く「スライドフォー機構」や、空席時はひとりでに正面を向いて止まる「オートリターン機構」が備わっているため、1席ずつの角度を整える手間もありません。
イスは、議長席・議員席ともに、コトブキシーティングのAC-3900シリーズ。たっぷりとウレタンフォームを入れた背は、正面から見ると上にいくにしたがってすぼまった形状です。丸みを帯びた背の上部と相まって、四角い空間に柔らかさを加えています。肘当ては、着席者が腕を乗せた時、その先端に指をかけやすいよう、上部にはテーパーがついています。使い込んだラスティック感を表現した黒いレザーの張地が、議場らしい品格あるクラシカルな印象を演出しています。
肘掛のない、ソファベンチタイプの傍聴席の張地は、圧迫感のない優しいベージュカラー。車イスの町民も傍聴しやすいよう、傍聴席エリアへの入口の前には、バリアフリー対応でスロープを設置しています。
新たな議場から、女川町の未来を育む道標が、発信されていくことでしょう。