鶴岡市の芸術活動拠点、愛称は「荘銀タクト鶴岡」
鶴岡市文化会館は、山形県鶴岡市の芸術文化活動の拠点です。1971年に開館した旧文化会館が老築化により解体され、2017年8月、装いも新たに新文化会館が竣工しました。美しい山々に囲まれた庄内平野にあることから、施設外観は周囲の山並に呼応するように、そしてその山の稜線と屋根が重ならないように、綿密に設計されています。
公募により決まった施設の愛称「タクト鶴岡」は、鶴岡(Tsuruoka)・芸術(Art)・文化(Culture)・集う場所(Terrace)の頭文字と、指揮棒(タクト)に由来します。同年9月には荘内銀行がネーミングライツを取得し、「荘銀タクト鶴岡」と命名しました。2018年3月にはこけら落とし公演が行われ、市内外から注目を集めています。
白い鶴が飛ぶ、明るく華やかな大ホール
大ホールの建築は、柔らかく重なる天井のイメージと連続する木の曲面が特長です。内装には木がふんだんに使われており、自然の木材で織られる羽衣をイメージさせます。
客席は、立体的なワインヤード型。ステージとの距離が近く、様々な音の響きを臨場感たっぷりに味わえる空間です。ワインヤード型でありながら、本緞帳・割緞帳も備わっており、花道も設営できるなど、コンサートだけでなく演劇・式典・講演会など、幅広い催しに対応できる多目的ホールとしても期待されています。
席数は、1・2階あわせて1,120席です。劇場・ホールの客席は、赤系など目を惹くカラーが主流ですが、このホールは、光沢のある淡いサーモンピンクをイスの張地として採用。張地全体に織り込まれた飛翔する白い鶴の姿が、ホールの床に使用された白木と相まって、空間全体に慶事を呼び込むかのように、明るく華やかに印象づけています。
淡い色が多い中でアクセントカラーの役割を果たすのが、ダークブラウンカラーのイスの背もたれや脚部です。背もたれの裏には、ふっくらとした背のクッションを支えるように天然木の背板をあしらいました。触感が重要な肘掛も、背板と同じく、天然木素材です。脚部の鋼管は、あえて丸みを持たせず、真っ直ぐに薄く細く仕上げることによって、クッション のボリュームと張地の美しさを際立たせました。
座のクッションには、体圧を均等に分散させる波形スプリングと型崩れがしづらい高密度のモールドウレタンを採用。視覚的な美しさだけでなく、芸術鑑賞のひと時を快適に過ごすための設計にも工夫を施しました。
東北の地から芸術・文化を発信する施設として、大きな期待が寄せられます。