ロームシアター京都
メインホール

2017.08.28
劇場・コンサートホール

施設説明

「京都会館」から「ロームシアター京都」へ

2016年1月、ロームシアター京都が開館しました。

ロームシアター京都は、過去50年間にわたり「文化の殿堂」として親しまれた、京都会館を再整備したものです。開館は1960年、設計は近代建築の巨匠と評される前川國男氏です。京都府唯一の2,000人規模のホールを抱える施設として親しまれてきましたが、開館50年を経て、施設全般の老朽化やホール機能の前近代化などの問題が顕著になり、利用者や来場者のニーズに応えることが難しくなりました。

そこで京都市は、2011年に「京都会館再整備基本計画」を策定。日本を代表するモダニズム建築として得ていた建物価値の継承と第一ホールの建替えの両立が目指され、基本設計から現場監修まで、建築家・香山壽夫氏が担いました。ピロティや中庭、中庭を囲む建物群などの全体構造を引継ぎ、水平に伸びた庇など外装の細部の意匠には保存修復が施された一方、ホールを含む内部空間を一新。ガラス張りのスペースは、人の集いや往来の様子が外の通りからでもよく見え、更に人を呼び込み賑わいを生む役割も担っています。

5層からなる2,005席のメインホール

新たなメインホールは、2,005席。旧ホールの外形を忠実に保ちつつ、不足していた舞台面積と高さを確保し、従来と同等の客席数を確保するために、客席を5層に積み上げました。バレエ、オペラ、ミュージカルなどの総合舞台芸術公演を主目的とした多目的ホールで、西洋の古典劇場のような劇的な空間を生み出しています。

メインホールのイスは、ロームシアター京都のためにデザインした、特注品です。着席した人の背中を優しく抱きしめるような、背もたれの緩やかなラインにこだわって製作が進められました。木部の色は、ホール空間に華やかさと重厚感を与えるダークトーン。張地がより鮮やかに際立つカラーです。

 

琳派をテーマに掲げたイスの張地

張地は、市の施設担当者と香山壽夫氏、テキスタイルを専門とするデザイナーの下、製作が進められました。

テーマは、代表作である「風神・雷神図屏風」を中心に名を知られる、「琳派」です。桃山時代後期に京都で誕生した琳派は、「狩野派」や「土佐派」のように流派として受け継がれてきた画派ではありません。先人の仕事を慕った作家達が各々私淑するという、特殊な系譜によって生まれました。

イスの張地に描かれた図案は、京都発祥の「琳派」に見られる芒(すすき)から着想を得た、香山氏によるドローイング「夕陽の芒原(すすきはら)」を基としています。「琳派」の洗練された特徴を捉えたデザインは、京都における様々な文化との対話から生み出されたもので、伝統と現代の華やかな融合をつくりだしています。

金色の穂が風に揺れるような美しい色合いと動きを創り上げるため、ベースであるモケット調の朱色の生地を抜色し、そこに新たに色を乗せています。穂の線の太さや色は、バランスを少し欠くだけで、客席全体のイメージを赤系統から黄系統へと変えてしまう可能性もあり、細やかな打ち合わせが何度も行われました。

京都会館の歴史を、そしてかつて京都で活躍した芸術家たちの息吹を継承した、新たなホールの誕生です。

居室データ

所在地
606-8342 京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13 地図
施主
京都市
オープン
2016年1月
席数
2,005
※車椅子席10含む
基本設計・実施設計監修・現場監修
有限会社香山壽夫建築研究所
関連リンク
  • ロームシアター京都 webサイト
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