工学院大学 八王子キャンパス 総合教育棟
教室

2013.01.30
学校教室

施設説明

工学院大学工学院大学125周年記念総合教育棟の設計にあたっては、大学での人の集まり方が一つの大きなテーマになっています。大学には、様々な人の集まり方があります。大勢が一同に会する講義、数人で議論を交わすゼミ、先生と学生との一対一の論文指導、一人じっくり行う調査や研究、といった具合です。こうした多様な人の集まり方を通じた知識や技術の伝搬、継承、発展は、教育の原点とも言えるものですから、その集まり方を体感し、楽しいと感じられるような空間を作ることを目指して設計したわけです。

最終案は、4つのL形をした建築が寄り添って、敷地の四隅に4つの広場と中央に風車形をした路地的なパサージュをかたちづくるものです。広場に面しては開放的な廊下が巡り、パサージュを介しては、様々な大きさの講義室や研究室が向かい合う構成です。ちょうど片廊下型の校舎が折れ曲がり、背中合わせに建っているような関係です。こうすることで教室は、単なる講義の場所を超えて出会いの場になったり、友人たちの活動に刺激を受けたり、あるいはまた新たな興味を発掘する場所にもなり、学生の社会性を育むきっかけにもなるのではないかと考えたのです。

もう一つ、建築そのものを教材にすることも、大きなテーマとなっています。例えば床躯体は、大きな講義室にはPC、小さな講義室は現場打ちコンクリートを用いたり、開口部は、広場側がアルミサッシ、パッサージュ側はスチールサッシで、外を見る窓、換気の窓、顔を出すことのできる窓など、用途に応じて使い分けています。また壁仕上げも、構造体はそのままコンクリートやモルタルとし、それ以外の乾式壁はすべて木質とするなど、建築の成り立ち方を素直に表現した構法や素材、ディテールを選択しています。

空調についても、床的に取り入れて、今後も継続的に観察していくことができるような仕組みを採用しています。特に空調イスは、工学院大学の野部先生とコトブキシーテイングの共同研究によって生まれたものですが、このような継続性のある研究がそのまま建築に採用されることは、学生たちにとっても幸せなことです。このような試みを通じて学生たちが、授業がなくてもここで過ごすことが楽しいと感じてくれたり、また教材としての建築に触れることで、建築に対する愛着を育んでいってもらえれば、これにまさる喜びはありません。

株式会社千葉学建築計画事務所
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授
日本女子大学家政学部住居学科 非常勤講師
早稲田大学芸術学校 非常勤講師

千葉 学 氏

居室データ

所在地
192-0015 東京都八王子市中野町2665-1 地図
施主
学校法人工学院大学
設計
株式会社千葉学建築計画事務所
竣工
2012年8月
席数
1,018
関連リンク
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