コトブキシーティング株式会社

ホール・劇場・学校・スタジアム・映画館など、公共施設のイスやカプセルベットの製造・販売

市の「誇り」を一体化して誕生した、ファブリック
鈴鹿市民会館の「市民のためのイス」

インタビュー / 2018.3.5

コンサートや演劇、映画鑑賞会、講演会のほか、各種大会や式典の会場として、そして鈴鹿市の文化を発信する施設として、市民に親しまれる鈴鹿市民会館。
1968年12月のオープン以来、ほぼ半世紀が経過したことで、2017年2月より耐震強化やバリアフリー化のための、改修・整備が行われました。一新した1,275席の張地には、鈴鹿市のシンボル花であるサツキがあしらわれています。改修工事を経て生まれ変わった客席について、お話を伺いました。

鈴鹿市都市整備部 住宅政策課
出口 慎也
 

2003年、技術職員(建築)として鈴鹿市入庁、営繕部局に配属後、建築、都市計画行政を経て2014年4月から再び営繕業務に携わる。主な業務は市の所有する公共建築物の設計、監理。

(株)タウンアートFABRIKO事業部
チーフテキスタイルデザイナー
澤村祐子

劇場ホールや議場、学校などを中心に、全国で300件以上の公共施設のイス張地のデザイン・提案を行う。手がけた施設は東京芸術劇場、ロームシアター京都、東急シアターオーブ、八丈町庁舎、NHK大阪ホールなど。

耐久性をそなえ、その表情は明るく優しいイス。

――ホールの、吊り天井耐震改修工事をきっかけに、客席イスをはじめ、ロビーなどのお客さまが利用される空間をリニューアルされました。その経緯をお聞きします。

出口
天井工事のためには、足場を組むためにイスを一旦はずさなければならないという工程がありますが、まずは既設のイスそのものが復旧に耐えられるものかという課題がありました。前回のイスの入れ替えから約30年が経過しており一部に機能的な劣化や痛みが見られることから、改修設計時点で、すでに入れ替えようとの判断がありました。
そこで新しいイスはどのようなものが良いかということになるわけですが、既設のイスを見ますと、膝の裏に当たる部分、つまり座面の角が擦り切れているものが多いので、摩耗に強い張地を使いたいと考え、電車の座席などで使われる、モケット調のものが良いと判断しました。その後、設計事務所さんを介して張地に関するご提案をいただいていました。
コトブキシーティングさん、澤村さんとの直接のやり取りは、2017年に入ってからでした。細かく要望をお伝えし、ほぼ毎回かなりのボリュームのプレゼンテーション資料を作成いただいていました。素材・色・デザイン・仕様など、段階ごとの選定理由も明快になりますし、ありがたかったですね。

いただく提案も資料もシミュレーションもいつもボリューム豊富

澤村
鈴鹿市は、「伊勢型紙」で知られていることからも、張地にとても興味やこだわりを持っていらっしゃることが想像できましたし、現地調査をはじめ事前に「鈴鹿市のホールならではの」という視点で提案書を提出していました。
打ち合わせでお会いし、お話をお聞きしますと、張地の耐久性のことから、カラーリング、デザインまで非常にこだわられていて、鈴鹿市らしさを分かり易く、広くアピールしたいというお気持ちが、しっかり伝わってきました。さらに「デザインにストーリー性を持たせたい」と、お話しもされていました。具体的な柄の方向性については、「伊勢型紙の伝統的な柄などもいいですね」から始まり「市のキャッチコピーや市の花があるので、組み合わせたような案はできませんか」というお話をいただきました。コンセプトの方向性も、非常に分かり易く、向かうところが明快でした。こちらこそ大変ありがたかったです。
出口
私どもが市長へのプレゼンテーションをしながら選定していく中で、“サツキの柄を使ったようなものはないか”という要望を受けてまして、澤村さんには、さまざまご無理をお願いして、いちからデザインを起こしていただいたというのが、この経緯のポイントですね。
澤村
市のキャッチコピー「さぁ、きっともっと鈴鹿。海あり、山あり、匠の技あり」ですね。海も山も、共通の「なみ」という要素がある。市の花「サツキ」と「波」を組み合わせた、いわゆる「サツキの波」です。この方向のもと、具体的にデザインしていくことは、やりがいがありました。

モケット調張地の選定のポイントは―。

澤村
物性比較資料も提出し、耐久性も高く、摩擦による色移りもしにくいなど、ご要望にお応えするよう、染色堅牢度の良いものを選定しました。また、伊勢型紙のお話から、「プリントする」という技法にも、コンセプトがピッタリ合うということで、今回のこの張地を提案しました。

新年、こちらのホールでは、成人式がこけら落としとなりました。普段は、どのような使われ方が多いのでしょうか―。

出口
さまざまなイベントがありますが、基本的に多いのは、市民の交流の場として、地元の幼稚園・保育園の生活発表会であったり、小学校の音楽会、中学校・高等学校の文化祭といった用途です。
また、2階には絵画・書道などの発表会に利用いただける展示室があります。こちらも改修しました。保育園などの生活発表会の際には、子どもたちの待機場所として使われます。

成人式もこちらですから、子供たちの成長と共にある市民会館ですね。

市民の誰もに伝わる一貫したストーリーとして「サツキの波」が広がる

さて、ロビーやトイレも変わりましたが。

出口
客席のリニューアルから、ロビーの天井、男女トイレの改修へとつながるわけですが、ホールのテーマを明快にした、シンボリックなものが欲しかったので、「サツキの波」をあしらいました。市民の誰もに伝わる一貫したストーリーを打ち出したいという思いがありました。
澤村
そういった意味でも、テキスタイルとして素材と技法とコンセプトがバランス良くまとまったと感じます。色柄など型紙による染色と同じような雰囲気を持ち、それぞれの場に合った表現となっていますね。
出口
とても満足しています。

お二人の今後の展望などをお聞きします。

出口
現在は、平成33年に開催される「三重とこわか国体」の競技会場となる施設の改修設計をまとめているところです。こちらも大規模な改修工事になるので、今回の市民会館での経験を生かしたいと思っています。
澤村
私も良い経験をいただきました。以前から、単にイスの張地ということだけではなく、モチーフやストーリー性で、地域や学校、企業などのブランディングにつながるようなカタチまで張地の提案ができたらいいなと、思っていましたので、今回、こうした展開をしていただけたというのは、とても意義ある経験でした。
出口さんが仰っていたのですが「お客さまが来られて、市の職員が案内する際に、コンセプトの話ができ、市のキャッチコピーを話すきっかけになりますね」とのお言葉が印象的でした。
例え、イスの張地だけであったとしても、そうした提案ができることが理想的だと思います。今後は、イスの張地から、さらに壁やカーテンなどにもテキスタイルが展開されて、トータル的なコーディネートが実現できればと思います。一つ一つ大事に作って、大勢のお客さまの目に触れ、この布地は実はこんな意味やストーリーがあるということがきっかけで、コミュニケーションが生まれ、喜んでいただけたら、本当に素敵ですね。出口さん、本日はお話をありがとうございました。

取材:2017年12月
このインタビューは、パンフレット「Hall being with citizen」に掲載されました。

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