○○だから好き! 私の「お気に入りの劇場」はコレ!

2016.07.26
コラム

東京都内だけで約1,300件――。これは、演劇・歌舞伎・舞踊・オペラ・ミュージカル・バレエ・コンサートなどの舞台芸術作品を製作・上演する、劇場・ホールの数を指しています。100席未満の小劇場から、2,000人以上を収容できる大ホールまで、規模はさまざま。各劇場の特色も多種多様ですが、利用者はどのような点に重きを置いているのでしょうか?
今回は、選択肢を「舞台の見やすさ」「イスの座り心地」「立地などの利便性」「ホスピタリティ」の四つに絞って、アンケートを行いました。

あなたの「お気に入りの劇場」のお気に入り認定ポイントを教えてください

  1. 舞台の見やすさ ― 67%
  2. イスの座り心地 ― 14%
  3. 立地などの利便性 ― 13%
  4. ホスピタリティ ― 6%

「舞台の見やすさ」が最重要!

劇場に足を運ぶ目的は、もちろん、作品を鑑賞するため。「せっかく購入したチケットなのに、大事な場面がよく見えなかった……」と足取り重く帰路につくことは、誰もが避けたい展開です。
アンケートの結果、最も投票数の高かった「舞台の見やすさ」のために、劇場オーナーと設計者の間では、設計時から検討に検討が重ねられています。模型や3Dデータを駆使し、舞台が見え辛い席を建築的に無くすため、数値データを用いながら試行錯誤。その結果、座席の配置位置が決まるのです。

視線(サイトライン)の検討

コトブキシーティングの仕事は、「部分的に見え辛くなる箇所を、どのようにしてイスで補うのか」が肝となります。代表的な策のひとつが、前後で少しずつイスの位置をずらして並べる千鳥配列。

劇場イス千鳥配列

ほかにも、座席位置に応じてイスの背もたれの角度を変えたり、座高の高さを変えたりするなど、一見同じように見える劇場イスにも様々な工夫を施しています。劇場へ足を運んだ際には、自分の席と他の席との間違い探しをしてみるのはいかがでしょう?

私のお気に入りの劇場はここ! 観劇ファンが選ぶオススメの劇場・ホール

アンケートと併せて募集した「お気に入りの劇場」のご意見には、面白い共通点がありました。選択式のアンケートでは「舞台の見やすさ」に圧倒的な投票数が集中していましたが、「お気に入りの劇場」の理由としては「非日常を感じる劇場の雰囲気」「ホスピタリティ」などが大多数を占めていたのです。「見やすさ」は誰もが重要視するポイントですが、「この場所が好き」という思いの背景には、鑑賞するための機能ではない面にも密接な関わりがあるようです。名前の挙がった劇場を、いくつかピックアップしてご紹介します。

天井に2万枚の貝殻が敷き詰められた日生劇場

日生劇場日生劇場は、1963年完成。劇場内はうねるような曲面で構成され、天井に2万枚ものアコヤ貝殻が散りばめられています。ロビーや階段のステップひとつひとつまで、建築家・村野藤吾氏の息吹を感じるかのような美しいデザインです。イスもその建築の一部としてデザインされ、優雅な曲線を持つ独立脚タイプのイスとして誕生しました。最近では、2015年12月から2016年5月にかけて、舞台機構などを含めた劇場全体の大規模なリニューアルが実施。
「お気に入りの劇場」として日生劇場を挙げた方からは、「劇場に一歩足を踏み入れた途端、目の前に広がる非日常の世界に開演前から幸せな気持ちになる」など、日生劇場の空間全体を想うコメントが多く集まりました。

初代プロデューサーは女性支配人! シアタークリエに光る女性ならではのホスピタリティ

シアタークリエ2007年オープンのシアタークリエ。座席数は609席で、舞台に向かって左手の下手(しもて)側には、ボックス席が6席。劇場イスの赤い張地と落ち着いた木の色味が、コンパクトな客席内を華やかに彩っています。
ステージの見やすさを評価する声も多かったのですが、異口同音に絶賛された点は、スタッフのきめ細かやかな心遣い! 誰もが口を揃えるホスピタリティ溢れた背景には、初代支配人が女性だったことが関係していそうですね。ミュージカルからストレートプレイまで、さまざまな作品が上演されています。

最新の音響・建築技術を駆使した巨大ホール・まつもと市民芸術館

まつもと市民芸術館感嘆のため息が聞こえてきそうな程、音響が素晴らしさが讃えられるまつもと市民芸術館。主ホールの最大客席数は1,800。本格的なオペラも上演できるつくりである他、オーケストラとオペラを2本の柱とした日本最大級の音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の主要会場にも選ばれています。
天井は昇降式で、客席数を最小700席に可変する他、反射音を調節することが可能。容積を変化させることによって、演劇やバレエ、クラシック音楽、コンベンションなど、様々な舞台芸術に適した音響空間をつくりあげます。
その音響への評価はもちろん、「街の誇り!」との声も上がり、地域に密着した芸術拠点として市民に愛されている様子が伝わって来ます。

ほかにも「好き」が詰まった全国の劇場・ホールがたくさん!

アンケートの結果、100を超える劇場・ホールの名前が挙がりました。その一部をご紹介します。

  • 日生劇場。ラグーン風で、客席の扉を開けた瞬間に素敵だなと思う。
  • 音の広がり方や、2階席から見たときの照明の綺麗さが好きなのは天王洲銀河劇場。
  • すり鉢型の新国立劇場の中劇場、傾斜具合がいい。雰囲気がハイソで気分が上がる!
  • 青山円形劇場。きっとここ以上の劇場に出会えない気がする…!
  • 博多座。音の良さと見やすさ、広いロビーとトイレの数。劇場係員さんの的確で親切な対応、広報の盛り上げ方。売店の充実具合、交通の便の良さ。 ハレの雰囲気が最高!
  • 新神戸オリエンタル劇場。イスの座り心地も良いし、眺めが好きであえて2階席のチケットを取ることも。
  • 渡辺翁記念会館は、初級者から上級者まで誰もがレベルを一つ上げて音を聴かせることができる素晴らしいホール。
  • 思い出の劇場、兵庫県立芸術文化センター。アクセスもいいしとても綺麗。
  • 自由劇場の、ひっそりとした奥まった小屋の中で熱いエネルギーがぶつかり合う雰囲気が好き。異世界が繰り広げられてる。
  • 神奈川芸術劇場KAAT、赤い座席が素晴らしく美しい。
  • サンケイブリーゼホールの真っ白なロビーと、対照的に真っ黒な客席が印象的。どの席からも見やすくて好き。
  • どこからでも楽しめる、青山円形劇場。ひとつになれる空間ができて素敵。
  • はつかいち文化ホールさくらぴあは、全てにバランスがいい。
  • 舞台の見やすさ以外の部分で言えば、ロビーや客席の壁(天井)のデザインは気になるところ。世田谷パブリックシアターと東京芸術劇場プレイハウス のシックでカッコいい感じ。
  • 帝国劇場の「ザ・大劇場感」が好き。
  • シアターオーブは男子トイレの個室も多いし綺麗、ホワイエからの眺めも良くて結構好き!
  • 音響が素晴らしく良くて感激したホールと言えば、まつもと市民芸術館。
  • シアタークリエが好きだな。 どこに座っても見やすい、スタッフさんの心遣いが素敵、椅子の座り心地も好き。
  • 紀伊国屋ホールはおそらく1番通った、正に原点。
  • 神奈川県民ホール。昔につくったものを長い間大切に使っていると感じられて、とても雰囲気が良かった。トイレも多いし、ロビーが広い。海も見える!
  • 舞台の見やすさは、驚くほど前の人の頭が被らなかった、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館が最強かな。
  • 青山劇場は椅子がフカフカ且つ幅も広くて、座っているだけでテンションが上がった!
  • 彩の国さいたま芸術劇場。舞台全体がとても見やすいし、蜷川さんの演出が生き生き伝わってきた。舞台の奥行きがあるせいか、他の劇場より「迫って来る」感じもすごい。

その他…

グランシップ(静岡芸術劇場)、梅田劇場、PARCO劇場、ザ・スズナリ、アステールプラザ、穂の国とよはし芸術劇場、 吉祥寺シアター、船場サザンシアター、TORII HALL、オーチャードホール、シアタートラム、ACTシアター、CBGKシブゲキ!!、盛岡劇場、花まる学習会王子小劇場、南陽市文化会館、新橋演舞場、大阪松竹座、宝塚大劇場、本多劇場、せんがわ劇場、ピッコロシアター、大阪市立芸術創造館、全労済スペース・ゼロ、シアターコクーン、三越劇場、岩手県民会館、はつかいち文化ホール さくらぴあ、国立劇場、 サンシャイン劇場…など

ひとつの施設が「お気に入りの劇場」になるまでの道のり

僅か2~3時間の鑑賞時間が如何に充実した時間に変わるのかは、上演作品はもちろん、設備面が大きく関わります。作品を楽しみたい、そしてその場所にいることを楽しみたい――。劇場・ホールは、施設の運営者、設計者、舞台に立つ俳優、それを支えるスタッフ、そして足を運ぶ観客ひとりひとり、数え切れないほど多くの人の強い思いが集まった場所なのです。

本記事は、2016年6月に実施したTwitter上のアンケート結果を元に作成しました。

この記事内で挙げた劇場・ホールには、コトブキシーティングの製造・販売ではない劇場イスも含まれます。

関連リンク

日生劇場 Webサイト
シアタークリエ Webサイト
まつもと市民芸術館 Webサイト

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