コトブキシーティング株式会社

ホール・劇場・学校・スタジアム・映画館など、公共施設のイスやカプセルベットの製造・販売

年月地方公立ホール改修工事
安全・耐震だけではない、市民一目瞭然客席リニューアル

CASE STUDY
volume 019 / 2018.7.3

都道府県や市区町村をはじめとした自治体が所有する公立の劇場・ホールは、全国で2,000館を超えると言われます。1945年の戦後から少しずつ数が増え、1980年代前半は全国的にホールの建設が相次ぎました。それから約40年、現代の市民のニーズに合わせたリニューアルや改修は、各自治体の共通の課題です。また昨今は、建築基準法に基づく天井脱落対策の規制が強化されたため、ホール天井の改修工事や耐震工事の対応も、急速に進んでいます。天井の工事の際に欠かせない「足場」を設置する際には、ホールのイスを一時的に撤去し再設置する必要があるため、このタイミングに合わせてイスの入れ替えを進めるホールも、多く存在しています。客席はホールを利用する地域住民にもっとも身近であり、直接的にリニューアルを体験できる場です。地方都市のホールリニューアル事例をご紹介します。

01客席の全面リニューアルで、シンボル花をあしらったホール空間へ新装

鈴鹿市民会館
ホール

伊勢街道沿いの市内の中心部に佇む鈴鹿市民会館は、1968年に開館しました。開館50周年を目前に控えた2017年、耐震強度が問題視されていたロビーや客席の吊り天井の一新と、館内の整備のため、約1年間の休館が決定。最も大掛かりな天井工事の足場を確保するためには、客席のイスも取り外さなければなりません。客席のイスは、前回の改修工事時に入れ替えが行われてから約30年が経過しており、機能的な劣化や痛みが顕著だったため、鈴鹿市はリニューアルへ踏み切りました。

イスは席同士が鋼管の上で横1列に繋がった「連結管方式」から、頑丈なスチール製の独立脚方式へ変更。これにより隣席の振動を最小限に抑制し、堅牢性が大きくレベルアップしました。張地に採用されたのは、摩耗に強いモケット調の素材です。市の担当者とテキスタイルデザイナーの綿密な打ち合わせの元、デザインには市のシンボル花であるサツキを取り入れることが決まりました。

サツキの花が波打って流れていくような印象的なデザインは、市のキャッチコピーである「さぁ、きっともっと鈴鹿。海あり、山あり、匠の技あり」に感じられる山並みや海の波をもイメージ。このサツキ模様は、鈴鹿市民会館を象徴するデザインとして、館内のロビーや天井にも取り入れられています。イスのリニューアルを経て、テキスタイルの模様として生まれたサツキの花のデザインが、館内全体を彩る、鈴鹿市民会館のシンボルとなりました。

02変わらぬ音響を再現するため、イスにも細心の注意を払ってリニューアル

弘前市民会館
大ホール

1964年に誕生した弘前市民会館は、開館50年目の節目にあたってスタートした大規模改修を経て、2014年にリニューアルしました。築50年が経った建物は建て替えが選ばれてしまうケースも多くありますが、弘前市は、市民に親しまれてきた姿をそのまま残す大規模改修を選択しました。

イスは、旧ホールのイメージを受け継いで、張地には同系色のグリーンを採用。1席あたりの間口も広げ、快適性を追求しました。イスの背や座裏、肘掛には触感を重視した天然木を採用し、高級感を演出しています。

リニューアルの重要課題となったのは、かねてより評価の高いホールの音響を保つこと。イスの素材として木部がの利用が増えたことにより、客席の吸音特性にも変化が生じることが予測されました。そこで、新旧のイスの音響測定を行って、吸音特性を確認。その差は、天井と壁の取合部に貼られていたグラスウールの撤去などで調整を計りました。ホールを大きく印象づける木の側壁の意匠や音の響きはそのままに、イスをフルリニューアルすることによって、客席へ新しい風を吹き込んだ大改修です。

03装い新たにテキスタイルと木部をリニューアル。高層階はバリアフリー対応

鎌倉芸術館
大ホール

神奈川県鎌倉市で1993年に開館した鎌倉芸術館は大小の二つのホールを備え、市の芸術の発信と発展を担う施設として活用されています。オープンから約四半世紀が経過し、2017年の1月から9月にかけて大規模な改修工事が行われました。

張地の張り替えは、空間の印象を大きく変えないことを重視しながらも新装感を演出できるよう、新たな柄で色のトーンを近づけた特注の張地を採用。塗装の剥がれが顕著だった木部は、最も目立つ通路側席の肘掛や背もたれなどを、既存色と合わせたダークトーンに再塗装。ムラや補修漏れがないよう1席ずつ取り外してから、丁寧に作業が進められました。

また、傾斜が急な3階席には、階段の昇降がしやすいよう「手掛け棒」を設置。通路側のイスの背もたれに設けられた「手掛け棒」は、手のひら大の大きさで、通行の際に自然と手を掛け握りやすい形状です。イスの木部と同じ色にすることで、鑑賞中の視界の妨げを最小限に抑えるだけでなく、客席空間全体に溶け込む設備となりました。イス自体は既存のものを利用しながらも、テキスタイルの張り替えと木部の塗り直しによる開館当時の美しさの再現を目指しつつ、バリアフリー化を図ったリニューアルです。

この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。