なら100年会館
大ホール

2018.09.10
劇場・コンサートホール

施設説明

新たな100年へと歩み続ける、「なら100年会館」

奈良県は、古代日本の中心地として栄えた古の都です。その歴史は京都より古く、街には、世界遺産が数多く立ち並んでいます。国内のみならず海外からも多くの人々が訪れ、歴史的建造物や、情緒あふれる景色を楽しんでいます。

1999年2月、奈良市制100年を記念し、「これからの100年を展望する施設」としてなら100年会館がオープンしました。

瓦をたくさん並べた外観は、奈良にある歴史的文化財の屋根を想像させるデザインです。ドーム形をした建物は、建築構造家の川口衞氏によって考案された特許構法のパンタドーム工法を採用しています。

パンタドーム工法というネーミングは、そのメカニズムが、パンタグラフと同じ原理であることに由来します。構造物をパンタグラフのように折りたたんだ状態でドームの頂上部を地上で建築し、最後にフープ材を取り付けてドーム骨組を完成させるという、高所での作業を安全に行いながら工期を縮めることを目的とした工法です。なら100年会館の建築当時、この工法を用いた施設は、国内外で5件の実例がありましたが、コンクリート補強剛板の外壁と屋根とを同時に施工したのは世界で初めてのことでした。

建物構法からこだわり、ダイナミックで力強さのある「なら100年会館」が誕生しました。

なら100年会館ならではの特別な構造やシステムを取り入れた大ホール

大ホールは、奈良県で最大収容人数を誇るホールとして、人気アーティストのライブやクラシックコンサート、落語の寄席など、多種多様に利用されています。他のホールにはない珍しい構造やシステムが、多彩な演目の開催に一役買っています。

通常のホールでは、客席の扉から外に出た先に各階層を繋ぐ階段がありますが、このホールは客席と同じ空間に階段があり、場内にいるまま上の観客席へと辿り着くことができます。その階段の先には、照明の光と影が織り成す幻想的な雰囲気が漂う開けたスペースが、そしてそこを通り抜けた先の階上には、宙に浮くかのようにブロックごとに分かれた客席が並んでいます。

各客席ブロックの床には走行レールが設置されており、このレールに沿ってブロックそれぞれを移動させることができる、劇場・ホールでは珍しいシステムが備わっています。公演やイベント目的に合わせて客席の形を変えることができるのです。

さらに、1階席前部分の床も可動し、イスの配置が変化します。通常時の客席から、多目的ホールとして臨機応変に使用することも可能としました。

そのほかにも、ステージ両脇の花道スペースを公演に応じてステージの演出として使ったり、時には車イススペースとして用いたりできるなど、変幻自在の機構に富んだホールです。

機能性に優れた美しい意匠のイス

客席のイスには、空調システムを備えています。一般的には、床に設置されることの多い空調の吹き出し口をイスに設け、鑑賞中の観客の足元が冷えすぎることを防いでいます。

イスの背上部から流れる空気は、人に当たらない角度で低速に気流が噴き出すため、冷気を感じやすい首筋に寒さが伝わることはありません。広いホールの中でも人が着席している空間だけを適切に空調するため、少ないエネルギーで効率的に適正温度へ設定することができます。また、気流は静かにホールに馴染むため、演奏中の際でも気流の音が気になりません。

機能的なシステムを持ちながらも、見た目が美しいイスを目指しました。背骨のラインに沿ってスリムな形状に設計した背板を2枚使用することで、吹き出し口を露出させず、高級感ある意匠を実現しました。背もたれ・座裏・肘掛へふんだんに使用した木によって、楽器や歌声が反響し、豊かな音の響きを楽しむことができます。

イス腰部分には背骨のS字ラインに沿ったクッションを設置。長時間の着座でもイスにかかる体圧が分散されるため、身体が痛くなりにくい仕様です。また、身体を支えるU字のくぼみが、座りやすさを向上させています。

力強い建築の中で息づく、気遣いの細やかさと機能性が光る大ホール。オープンから約20年を経た今も、快適な環境を観客へ提供し続けています。

居室データ

所在地
630-8121 奈良県奈良市三条宮前町7-1 地図
施主
奈良市
設計
株式会社磯崎新アトリエ
オープン
1999年2月
席数
1,476
関連リンク
  • なら100年会館 webサイト